転入生はヒロインではないらしい

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先程のことなどなかったように全員まぁそれなりに成長途中の男子高校生なわけで目の前の飯に夢中になっていたら今度は頭が割れるんじゃないかと思うほどの大絶叫が聞こえてきた。聞こえてきたなんてもんじゃないが。ライブ会場かのような声に目をぱちくりとさせて思わずもっていた唐揚げを落としてしまった。危ない。トレーの上でよかった。 一ノ瀬も佐藤もあまりの煩さに耳を塞いでしまっている。それはそう。なんだったら食堂が揺れている気さえした。 「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!!」」」 何事かと見てみればあぁ、と納得してしまう。そこには一人の人物をセンターにするように歩いてくる集団、生徒会役員一同がいた。 「キャァァァァア!!!榊生徒会長様ぁぁぁあ!!!かっこいい…素敵!!!むり目が!!」 「あの溢れ出る色気…!?なに!?天は榊様にいくつ美点を与えたの!?」 「北条副会長…!やっぱ綺麗だわ…!抱きてぇ〜!!」 「お美しい…神々しい…素敵…北条様…」 「ひぃ…さ、早乙女様…!!あぁ手を振ってくださっている!!!?恐れ多くて振り替えせない…!!」 「早乙女様今度僕もお相手してくれるかな…」 「キャアア!香山様相変わらず寡黙でお静かな表情…!でもそこがミステリアスで素敵!」 「香山様かっこいいっ…!!」 「杠葉様たちだ!!!おふたりともかっこいい…!!尊い…!!」 「ニコニコしてるのはなに…!?いいことでもあったの…!???こっちまで幸せ…!!」 「全員揃って来るなんて…!」 もうもはやアイドルである。冷めやらない熱気の中生徒会役員一同は悠々と真ん中を通過している。あそこまで叫ばれて余裕があるとは…さすがに歴も貫禄も違うなと感じた。正直確かに俺の目から見ても生徒会役員面々は死ぬほど顔がいいと思う。中学でもこれレベルは早々いなかった。下手したら芸能人よりかっこいい。ただそれだけ。男にそれ以上もそれ以下も思わない。 そんなふうに観察していればどうやら生徒会のメンツはこちらの方に歩いてきている。なんだ?と思いながら様子を見てみる。何故だか佐藤だけ「うわわわわ」と顔を青ざめさせているがなんだろうか。 そうこうしている内に生徒会役員はこちらの席…もとい、転校生達が座っている席へ向かっていった。 「瑛人…!会いたかったですよ」 そうすれば徐に白髪の美人そうな<副会長>と呼ばれていたやつがもさもさ転校生の顎をすくった。それに食堂全体が絶句する。そして一泊おいたあとに誰かの悲鳴が聞こえてきた。 「あ!理人じゃん!さっきぶりだな!!」 「ふふ、覚えていてくれて嬉しいです」 「当たり前だろ!俺たちもう友達なんだから!」 存外席が近いせいか会話の内容も表情も丸見えである。とゆうか転校生見かけによらず声でかいな。副会長の頬がほんのり色づいている気がするのは気のせいか。佐藤の様子がさっきから青くなったり赤くなったりと面白いのが気になる。 「副会長との絡みとかあの顔は最高だけど…!だけどあんち…!されどアンチ…!うぐ〜!」 小さな声でなにかを我慢するような仕草は普段は余りみないもの。お前我慢とかできたんだな。 しかもさっきから副会長とあのもさもさが話す度に食堂の色んなところから悲鳴が上がる。それもそれで少し面白い。 「…すみません。友達の距離感としてはだいぶ近いと思うんですが。」 そうしていると副会長ともっさんの間に例の爽やか王子綾辻が割って入る。一匹狼柳田も威嚇でもしてるかのように目をぎんっと釣り上げて生徒会を睨みつけていた。こえぇな。 「…誰ですか。あなた。」 「瑛人と同じクラスで友人の綾辻 詩音です。」 「それで一年生が私になんの用で?」 「別に副会長様に用はありません。友人の距離感としては些か近いのではと思っただけです。なにか?」 「あなたにそれを口出しされる筋合いはないと思いますが。私と瑛人の距離感の話を第三者がする必要性を感じません。」 「…おふたりはお付き合いされてるのですか?」 「はっ!?お、おい!詩音突然なんてこといいだすんだ!つつつつきあうって!」 「まだ付き合ってないですが。それが何か?」 「まだって…」 爽やか王子と副会長があいだにもっさんを挟んでなにやら言い合いをしている。バチバチだ。どうしても姑同士の喧嘩のように見えてしまうのはあの二人の見た目が悪いのか。俺の見方が悪いのか。とにかく修羅場ってやつである。
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