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「あ、来た来た~!こっちこっち!」
新横浜駅の改札を出たところで、昇太が手を振っている。
集合場所にやって来た樹は、昇太を見つけて歩み寄った。
樹はあまりかしこまらない程度に着崩したスーツ姿でやってきた。
昇太も同じような格好である。
少し遅れてもう一人、忠士がやって来たのだ。
青島樹、宮本昇太、そして坂本忠士。
この三人は高校時代をともに過ごした仲間であり、今でも年に数回会う仲の良い友達同士である。
三人揃ってホテルへと向かい、会場の受付で記帳をして中へと進んでいくと、懐かしい顔ぶれがあちらこちらに見受けられた。
ホテルの大広間が創立記念パーティーの会場になっているのだ。
大広間の真ん中には大きな垂れ幕に、学校名と「創立五十周年記念感謝祭」という美しい筆文字。
どうやら理事長が書いたもののようである。
会場にはすでに人が大勢集まっている。
年代も様々で、卒業して間もないような若い者から人生の荒波を乗り越えてきたであろう大先輩らしき人たちまであらゆる面々が見受けられる。
キョロキョロしていると、三人は背中から誰かに話しかけられた。
「相変わらずだなぁ君たち」
振り返ると、そこに立っていたのは口ひげの紳士。
柔らかな笑みを目元と口元に浮かべている。
「あ、尾崎先生!お久しぶりです!」
尾崎公平、樹たちの担任だった先生だ。
英語担当で帰国子女であるため、大学は英語の学部を中心に受験するつもりだった樹はよく相談に乗ってもらっていたのだ。
当時金髪だった樹に厳しく言う先生もいた中、尾崎は樹に何があったのか、愛情を持って親身に接してくれた一人だった。
「立派に大人になってくれたようで、安心したよ」
「あはは、はい!この通り立派になりました!」
昇太が笑いながら言うので、樹と忠士もつられて笑っている。
「忠士は結婚したんだろ?」
「はは、なんか恥ずかしいな」
照れて頭をかく忠士の横で、昇太が続けた。
「オレは今日、このパーティーで運命の彼女と出逢う算段になってるからな」
身体の前で腕を組んでドヤ顔をしている昇太。
彼女いない歴イコール年齢の昇太は、今日のこのパーティーに賭けているらしい。
「あのな、オレ彼女がなんで出来ないのか色々と考えてみたんだ」
真剣な眼差しで話し始める昇太。
樹と忠士はそんな昇太の方を見た。
「ほら、昔っからオレたち三人でいたじゃん?」
うんうんと頷く樹と忠士。
「オレがいいなって思った子は、みんな樹のことが好きになってたじゃん?」
「え?!そんなのオレ知らねぇぞ?」
樹は本当に知らなかったらしく、驚いた顔で言った。
「お前が気付かなかっただけだよ!」
忠士も笑いながら樹に言った。
「で、忠士は大学で彼女できただろ?樹とは別の大学だったからだな」
「昇太も樹とは違う大学だったじゃん」
忠士が言い放った言葉に、昇太はいじけて背中を見せしゃがみ込んだ。
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