青春の輝き

7/9
前へ
/9ページ
次へ
 そのうち閉場時間の二十一時がやってきた。  名残惜しいが、これでお開きだ。  樹と忠士、昇太の三人は新横浜の駅へと向かったが、昇太が忘れ物をしたと言って一人で会場へと引き返した。  忠士はコンビニで買い物をするとかで店に入っていった。  樹は一人で歩道橋を歩き駅に向かっていたが、後ろから呼び止められて振り返った。 「樹く~ん!待ってー!」 「え、彩花さん?」  パンプスで走り寄り、樹に追いついた彩花ははぁはぁ言いながら笑った。 「樹くん見つけたから追いかけてきちゃった」 「そりゃどうも。ていうか大丈夫ですか?そんなに走って」  彩花は樹の腕に捕まり、少しの間その場で乱れた息を整えた。 「ねぇ、良かったらちょっとどこかで飲み直さない?」  突然の彩花からの申し出に、樹は面食らった。 「ほら、積もる話もあるでしょ?久しぶりだし」 「あ~……いいですよ。どこ行きます?」  二人は揃って駅の近くの居酒屋へと入った。  先ほどの創立記念パーティーとは打って変わって、和風の面持ちである。  彩花はビールをジョッキで注文し、ぐいっと喉の奥へと流し込んでいく。  その様子を見ながら、樹もジョッキに口を付けた。 「彩花さん、お酒強いんですか?」  彼女の様子を見て樹は尋ねた。  そんな樹はかなり酒に強いため、先ほどからもわりと飲んではいるが顔色ひとつ変わっていない。 「強いわけではないけど、ビールは好きなの。樹くんはバーテンダーなんですってね?お店に行ってみたいなぁ」  頬を赤く染めながら彩花は言った。 「機会があれば、いつの日か」  樹はふっと微笑んだ。 「ほら、注文したら目の前で作ってくれるんでしょ?樹くんカッコいいしピッタリだよね」  そしてまたひと口、ビールは彩花の喉に注ぎ込まれる。  樹は枝豆を食べながら延々と続く彩花の話を聞いていた。 「ねぇ、樹くんとこうやって話すのって久しぶりで嬉しいな。全然変わってないね」 「彩花さんこそ。あの頃も明るくて楽しい人でしたし」  一時間半ほど賑やかな時間が続き、二人は店を出た。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加