藤宮冬子

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ーーー ーだめなの? ーだめだよ。かげさんとはくらせないの。 ーこんなに可愛いのに? ー可愛くてもだめだよ。みちにまよってしまう。 祖母がゆっくりと首をふった。 胸の中のソレを、優しい祖母は飼うことを許してはくれなかった。 悲しそうな瞳をして、「まよう」だなんて意味もわからない。 それでも両親のいない少女にはこの祖母しか頼れる者はいないのだ。 大粒の涙がボタボタと落ちた。透明な雫を頭に受け止めながらソレは悲しそうに笑う。 ーしかたがないよ。おばあちゃんのいうことはもっともだもの。 そして少女にだけ聞こえるような小さな小さな声で囁くと、腕の中から飛び出して夜闇に溶けた。 祖母のしわくちゃの手が戸惑いを滲ませながら少女の頭を撫でる。 涙は止まっていた。 『またあした』 ソレはそう言って消えていったのだ。 ーーー
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