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【22:57】 午後の執務も終わり、諸々の実務も片付けてようやく自由な時間を手に入れることが出来た。俺の一日は全てルーカスを中心に回っている。朝起きてから夜眠るまで。ルーカスが眠っている間だけ俺は自由に過ごすことが出来る。 とはいえ、他の親衛隊たちがそうであるように、俺は夜の時間を使って外に出ようとは思わない。飲み屋に行ったところでベータである俺は声をかけられることもない。客の中には有能で地位のある、そして優れた存在であるアルファと関係を作りたいやつもいる。 例えオメガのように番になれなくとも、ベータにとってアルファというのは憧れの存在ということは変わらない。あわよくば、という女性(稀に男性も)いる。 それに、このご時世ワクチンを打っていないオメガはいない。昔のように「間違い」が起きないよう、オメガが自衛出来るようになったのだ。 「それなのにまだ運命の番を信じるなんて……馬鹿げている」 小さなランタンの下で小さな日記帳を開く。実家の書庫にひっそりと置かれていたこの日記帳は、随分と昔に書かれたようだ。ここから少し離れたところにある港町に住んでいたアルファによって書かれている。 随分と分厚いものだから全て読むには時間がかかるだろう。 「地主だったアルファがいきなり花屋だなんて、そりゃ何も分からないだろうな」 「花屋? ザック、花屋でも開くのか」 「うわあっ!?」 背後からいきなり声をかけられて、素っ頓狂な声を出してしまった。なんてこった、親衛隊である俺がこんなにも簡単に背後を取られてしまうなんて! まだ心臓がバクバク鳴っている。 「る、ルーカス、なんでここに……!」 「んー、暇だったから。それより! 何読んでんだよ」 さっき俺が着せた部屋着が視界の端で揺れていた。たっぷりの香油で体を解してやり、柔らかくて着心地のいい寝間着を着せてやったはずなのに。 どうしてこいつはさっさと寝てくれないんだ。
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