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【グロキシニアの月 第一節】 「こちら、おつりです」 「おや、ありがとねぇ」 小さな小銭を念入りに数え、間違いがないことを確認してから客に手渡す。しわくちゃの小さな手は、かさついているのにとても暖かい。 この老婆は、ええと、確か。 「マチルダさん、でしたっけ」 「そうよ。嬉しいわぁ、アスランに覚えてもらえて」 良かった、正解だった。胸の奥でほっとため息をつく。昨日の夜、ルークが話していたことを覚えていてよかった。毎月決まった日に花を買いにくるからそろそろだと言っていたのだ。 買うのはいつも決まって真っ白の花。種類は何でもいいが、とにかく全て白でないといけない。変わった客だとは思ったが、実際に白い花束はどこか幻想的で美しい。 「また来月に来るわね。ルークにもよろしく」 「はい。ありがとうございました」 嬉しそうに花束を抱えたマチルダが、にこにこ笑いながら店を出ていった。ドアにつけていた真鍮のベルが鳴り終わると、どっと疲労が押し寄せてくる。 まだ慣れないな、これ。 「アスラン、ごめんね。会計任せちゃって」 「これくらい誰でも出来る」 「そんなことない。それに、アスランは覚えが早いから本当に助かってるんだよ」 新しい花をバケツに入れつつ、ルークはこちらを見てはニコニコしている。なにが、どう、楽しいというんだ!
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