大正九年五月

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 彼についていきながら、その背後でずっと、何の押さえもない乳房がぶるぶると揺れ動いている。静子は呼吸が弾んで、もうどうにもならなくなり、幅狭い階段の前でへたへたと腰を落としてしまった。 「はぁーっ……はぁーっ……」  懸命に四肢を動かし、ほんの数段よじ登っていく静子の背と尻を、彦七は是とも非とも言わずに佇んで見守った。  やがて静子は座り、体ごと振り返った。やり場のない両手を鎖骨の上に置き、大きく股を開く。  距離こそ少し開いてしまったが、ちょうど彼の目線の高さに性器があった。まだ何もしていないはずのそこの、ぐずぐずと紅色に熟した様がくっきり見え、彦七は黒猫のような真顔になった。 「……()ったのですか?」 「うああんっ……な、舐めて……お願い、舐めてぇっ……!」 「御令嬢……なんでもしますよ、俺は。今までもそうだったではないですか。剃らなくとも……」  残念がるでもなく蔑むでもなく、彦七は何か純に案ずる目をした。そのついでに、足をひとつ階段にかけて体重を乗せた。  真っ黒な裾がやや割れて、白い脛がちらついた瞬間に静子は息を飲むが、彼女の痴態は全くそれどころではない。ぱっくりと開脚した真ん中に、丸々とした双子の乳房もあって、うちひとつを彦七は軽く鷲掴んだ。 「あ、ふっ……!」  一層と蜜の湧き出したそこに、いよいよ屈み込んで唇を寄せる。今宵初めて互いの粘膜が触れ、擦れ、熱を上げながら混じり合い、静子は天を仰いでその名をかなぐり捨てた。  やがて、たっぷり濡らした陰核を吸われながら、長い中指をも埋め込まれる。回転や蠢きを加えつつ、ゆるゆると出し入れされれば、歓喜と共に腰が前後し始めた。  彦七は身を起こすと、今度は乳頭を接吻で温めていく。  膣内に残した中指の律動は、上擦っていく静子の息に合わせるではなく、常に僅か速い、あるいは遅い。激しく引き上げて、かと思えば悶えさせ、本当に上り詰めるその瞬間にだけピタリと合うようになっている。―― 「ひぃぃっ、ひっ、いっ、ひやぃぃっ……! い、あ、や、きゃあああぁぁ! ひこっ、しっ――うああっ、ああああっああぁぁぁん――ッ……!」  温かな飛沫が彦七の手をしとどに濡らす。掻き出すようになお続け、勢いよく引き抜けば、一段下、二段下、廊下の木目にまでシュウシュウと届いてしまう。 「あっ、あっ……きもち、い、きもち……あ、あ、あ、あん……っ」  彦七は既にすっくと立ち上がっていた。ゆっくりと帯を解く彼の目と鼻の先、静子は全てを曝け出したまま、未だうわ言のように感じ入っている。  固く尖った乳首は汗と唾液で濡れそぼり、たっぷりした乳房の底を伝い腹へ滴り落ちる。それに反応して肌が震える度、尻の弾力がビクッと下腹部を跳ねさせた。無毛の股ぐらはつるつる、てらてらと光り、指一本分の形をした空洞が物欲しげに収縮している。……
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