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人探し
俺は文哉の事を何も知らない・・・・・名前が一之瀬 文哉だという事、隣に住んでいる事・・・・・メガネ野郎の事・・・・
それだけだった・・・・・仕事は何をしているのか?歳は幾つなのか?何も知らないのに・・・・そんなものは知らなくても俺の憧れの人には変わりない・・・・・彼に相応しい男になるために努力をした。
卒業と同時に仕事をするための事務所を借り、この先一緒に仕事をやって行く信頼できる共同創業者を募集した・・・・・・それは同じ夢を追い同じ想いを形にする・・・・・不安や精神的な安定を共有できる相手を探そうと思った。
価値観が一致して俺のビジネスに共感してくれる人・・・・・・不安だった。
そんな人が見つかるのかという不安・・・・・・もし見つからなかったらと言う不安・・・・・・
募集要項を見て何人かと面接をした・・・・・だが違う・・・・・何かが違う・・・・・探し求めているのは・・・・・一目見ればわかる気がした・・・・・気持ちがぴたりと合う人・・・・・話さなくても気持の通じる人・・・・
毎日何人もの人が訪れた・・・・・・年齢も性別もさまざま、経験豊富な知識の豊かな人もいた、自信家もいれば優秀な人材もいた・・・・・何が不満なのか分からないが・・・・・・胸に響く何かがなかった。
面接を始めて1か月が経ってもこの人だと思える人に逢えない・・・・・だからと言って妥協はしたくなかった。
この仕事をやっていくうえで一番大事なポイントだから、絶対見つかるまで待つつもりでいた。
面接を終えて資料にももう一度目を通す・・・・・やる気のあるたくさんの人たちだった・・・・・
投資家としても仕事もやりながら連日の面接で疲れていた・・・・・昼も夜も最近ろくに食事もとっていない・・・・
マンションへ着いたのは深夜になっていた、疲れた身体でエレベーターのボタンを押す。
すぐにドアが開いて乗り込み5階のボタンを押した・・・・扉が閉まる寸前に男の人が飛び込んできた・・・・・
俺は疲れてエレベーターの中で座り込んでしまった、手すりに手を置いて立ち上がろうとしたとき・・・・・
「駿・・・・・・大丈夫?しっかりして・・・・」
そう聞こえた・・・・・・・だがその声を確認する余裕もないまま・・・・・・眠っていた。
目が覚めた時いつもと違う天井があった・・・・何処だろう?そう思って周りを見た・・・・・知らない部屋だった・・・・・
起きあがってベッドから降りようと起き上がった瞬間、目眩がして布団に顔を伏せてしまった。
じっと目を閉じて耳を澄ましてみる・・・・・・何も聞こえない・・・・・
その時ドアの開く気配がした。
「・・・・・・・駿」
そう呼びかけながら身体を起こしてくれた・・・・・・目を開けてその人を見た。
「文哉・・・・・・俺・・・・・」
「気が付いた?ここは俺の部屋だよ・・・・・夕べの事覚えてない?エレベーターで倒れた事?」
「アァぁ・・・・・少し覚えてる・・・・・エレベーターに乗った時眠くて・・・・・」
「眠かったんだ・・・・・仕事し過ぎ?もう少し休んでていいよ」
俺はまた目を閉じて眠った・・・・・・
目を開けた時真っ暗な部屋にいた・・・・・
ベッドから飛び降りたと同時にベッドから落ちた・・・・・
ドアが開いて明かりが差し込む・・・・・
部屋の灯りが付いて目の前に文哉がいた・・・・・「文哉・・・・・・」
「やっと目が覚めたね、起きれる?」
「俺・・・・・・文哉の部屋に寝てたんだ・・・・・・今何時?」
「夜の9時過ぎだよ・・・・・・あれからずっと寝てた・・・・一回目が覚めてそれからまた寝て・・・・・20時間ぐらいねてたよ」
「・・・・そんなに?」
「お腹すいてたらなんかつくるけど・・・・・」
「すいた・・・・・」
「わかった、顔でも洗って・・・待ってて」
俺は文哉の部屋で顔を洗って椅子に座って待った。
文哉は小さな土鍋で鍋焼きうどんを作ってくれた・・・・半熟の卵が入ってスープが美味しくてあついうどんが美味しかった。
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