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夏休みが終わる日。
学生時代の四十日はあっと言う間に太陽に溶かされ、憂鬱な九月の声でまた学校が始まる。
私は、その日、既にどうしようも無い山積みの宿題を放り出し、友人の関口と一緒にいつもの駅前にある城址の公園に居た。
「結局Fはまだ帰って来てないのか」
私はタバコを吹かす関口に訊いた。
「うーん。帰って来ないって言っても明日から学校やしな…」
と私を振り返る。
「今日あたり帰って来るんやろ」
そう言うと長いタバコを足元に捨てた。
Fは先日、関口の彼女の周囲に起こる怪異を収める事が出来ずに、祖父の寺へと旅立った。
Fの祖父は大きな寺の住職で、Fの不思議な能力もその祖父からの隔世遺伝だと聞いていた。
Fは祖父の下で、何かを得て来ると私にも言っていた。
私たちからしてみると、Fの力は常識を逸しているのだが、そのFでも手に負えないモノはある事を初めて知った。
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