2.ライヴ前の予感

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2.ライヴ前の予感

ーヴァイザスの楽屋にてー  ヴァイザス達の楽屋に、若い男性が入って来た。  魔族と思しき中年の男性は、不機嫌そうに立ち上がった。  彼は「THE BAD MEN」のドラマー、ファルコンという。 ファ「アイツ、ノックもナシに………」 ヴァ「黙ってろよ」 ボ「アンタがヴァイザスさんかー。いやぁ、貫禄バリ感じるわ。あ、自己紹介してなかった。わいはボブや。よろしゅう!」  ボブと名乗る男性はヴァイザスと握手をする。 ボ「ほな、わいはここで」  ボブは用事だけ済ませると、さっさと楽屋を出て行った。 「俺、何か緊張して来た。トイレに行く………」  ギタリストの若い風変わりな天族のジャドウは、慌てて楽屋を出る。 ジャ「本当に上手く行くのか??」 ボ「任しとき」  ファルコンはヴァイザスの肩を軽くたたいた。 ファ「アニキ、あのボブって………」 ヴァ「わかってる」 ファ「気を付けろよ。アイツ、キナ臭ぇぞ」 ヴァ「メオスにも言われたぜ。俺はよっぽど嫌われ者らしいな」  ヴァイザスは高笑いをする。  収録後、ステージでボブが再びヴァイザスにすり寄って来た。 ボ「ヴァイザスはん、マジすげぇわ。また機会があったらよろしゅう」 ヴァ「あぁ」  ヴァイザスは素っ気ない返事をする。 ーヴァイザスの帰宅後ー メ「オヤジ、大変だ!」 ヴァ「どうした?」 メ「誰だかわかんねェけど、オヤジの正体を暴いてディスってる奴がいるんだよ!」 その時、メオスの顔をめがけて手紙が投げ付けられる。 メ「何だ………3日後の貴殿のラトルスのライヴ会場にて、何かが起こります。お楽しみに………って、マジ危ねェよ、オヤジ!」 ヴァ「これもまた一興さ………」  メオスは怒りをあらわにした。 メ「一興、一興って、今まで危ねェことばかりじゃんかよ。オレは反対だ!」 ヴァ「せっかくのライヴなんだからな」  メオスは何度も短文の手紙を読み返す。 メ「ていうかコレ、ボブからなんじゃねェのか?」 ヴァ「それこそまた一興じゃねぇか!要するに俺の命を狙ってるんだろ?面白れぇ!!」  ヴァイザスは大声を出して笑い出した。  メオスは椅子を倒しながら、急に立ち上がった。 メ「オヤジの命を狙ってるって!?じゃぁオレはむしろ大反対だ!!」 ヴァ「うるせぇな!メンバーも観客もいるのに、主役がいねぇんじゃお話にならねぇじゃんか」  メオスは何かを覚悟した様に、深く深呼吸をした。 メ「オヤジ………何があっても行くってんなら、今オレを殺るくらいでかかって来いよ!!」  ヴァイザスは立ち上がり、ゆっくりとメオスの方に向かう。  それに対してメオスは受け身を構える。  すると、ヴァイザスの身体が超魔族化した。  顔色は紫に替わり、牙が一層長くなり、何よりも翼が全長5メートル程に拡大し、ヴァイザスは紅い瞳でメオスを睨みつけた。 メ「これが………オヤジの正体………!?」  メオスは冷や汗をかいて、あ然としている。  ヴァイザスは一瞬でメオスのお腹を蹴る。 メ「マジでやりやがったな、このク…ソ……オヤ………ジ……………!」 ヴァ「悪ぃ、メオス。俺の本体がバレてしまったんでな。これで地上の奴らは残せなくなった。ボブの奴も覚悟しとくんだな………!」  ヴァイザスは倒れたメオスに目配せをして、ラトルスの街へ羽ばたいて行った。  そして3日後、ライヴの日がやって来た。  楽屋でのヴァイザスの姿はいつも通りに戻っていた。 ヴァ「………俺は、この日をずっと待っていた。俺が守ってやるから、ファルコン、ムンク、ジャドウ、みんな安心して演(や)ってくれよな!」 ファ「アニキ………ホントに大丈夫なのかよ?!」 ヴァ「わからん………だが、お前達は必ず守る。それだけは忘れないでくれ」  ヴァイザスの瞳が緑色に一瞬光ると 無口なベーシストの人間であるムンクが口を開いた。 ム「わかった」 ジャ「あ、ああ。ちょっとトイレ」  ジャドウは慌てて楽屋から飛び出す。 ファ(ジャドウの奴、キナ臭ぇな…)  ファルコンが不審な表情をあらわにする。  ジャドウはボブと待ち合わせをした。 ジャ「こ、これは………」 ボ「これならヴァイザスもひとたまりもないやろ」 ジャ「本気か?ボブ?!」 ボ「なぁに、これを使えば、わいらは正義の味方や!」  ジャドウはあ然とする。 「おーい、ジャドウ、どこにいるんだよ!」 ファルコンの声が響く。 ボ「ほな、わいはここで」  ボブは一瞬で消え去る。 ファ「何やってんだ、ジャドウ、もうすぐ時間だぜ」 ジャ「あ、ああ」  ファルコンはますますジャドウの行動に不審感を抱いた。
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