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そんな姿を遠くから見守っていたワタルは、もう二人は大丈夫だなと息を吐いた。お互い思いやるがゆえにすれ違ってた二人だ。会いたいと思っていた人に会えた、これからゆっくりまた過ごせばいい。
くるりと公園に背を向けて、ワタルは歩き出す。
「会いたい人、か」
そう一人呟いた。
働く時間がやってきてワタルがレストランに戻ると、イワタ夫妻が座っていることに気がついた。目が合い、ワタルは笑顔で駆け寄っていく。
「いらっしゃいませ!」
相変わらず妻はショートケーキ、夫はコーヒーのみだ。物静かに向かい合っているだけの二人は、とても温かく優しさに溢れているように感じた。
妻が目を細めて言う。
「こんにちは、やっぱりここのショートケーキが一番だわ」
「何回も食べてよく飽きないもんだ」
呆れたように言う夫に、ワタルは笑ってしまう。婦人はいいじゃないの、と拗ねながらケーキを頬張っている。そして思い出したように、ワタルに尋ねた。
「ユイカさんたち、無事和解できたの?」
「ああ、大丈夫ですよ。多分そのうちレストランにもきてくれるんじゃないかなあと」
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