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それから10年ほど嘉代子と連れ添い、仕事も順調で、可奈子もすくすく育ち、2人目が欲しいねと話していた時だった。
同期の弁護士達との飲み会に参加した真嗣は、藤次が京都でまだ独身で暮らしていると言う情報を耳にする。
それ以来、頭の中は藤次のことばかりになり、恋しい思いが一気に溢れ、いつしか嘉代子を抱くことができなくなり、真嗣はやはり、自分が本当に愛してると言える相手は男性なのだと自覚。
夏の終わりに嘉代子にそれをカミングアウトして、離婚して欲しいと懇願。
調停の末、家族を捨て仕事も辞め、藤次のいる京都へ行き、半ば押しかけ女房のように同居を願い出ると、藤次は深く詮索もせずあっさりと、家事をすることを条件に了承。
同棲さえすれば、いつかきっと気持ちに気づいてくれる。
そう甘い考えでいたが、その思いは呆気なく砕かれる。
藤次は確かに独身だった。
しかし、恋人はいたのだ。
名前は笠原絢音。
白い肌に長い黒髪、整った顔立ちの美人で、藤次はすっかり彼女に夢中で、自分のことを性愛対象として見る様などかけらもなく、思いは宙ぶらりん。
いっそ言って砕けて楽になろうかと何度か考えたが、この思いの為に手放した物の多さを考えると言えなくて。
結局、二言目には友達じゃんと言って、藤次の側にいることを、真嗣は選んだ。
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