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今日は、あの木の下で星空をみよう。そう決めて、夜までずっと楽しみにしていた。
ふたご座流星群を見るのだ。ここでなら、満点の星空を見ることができるから好きだった。流れ星もここでなら、寝るまでに数えきれないほど見えるだろう。
夜空に輝く星々に私はうっとりとした。望遠鏡を持っていないので一つ一つの星を見ることは出来ないけれど、この地球から見える星空を私は満喫していた。
「あっ、流れ星」
本当に流れ星は一瞬で過ぎ去ってしまう。願い事は考えてあるけれど、その時間内に願うことが難しい。私は空を見上げて、自分の手と手を取り合って流れ星を待った。
そして、また流れ星が来た瞬間に私は眼を閉じ、願い事をした。眼を開けると、もう流れ星は無くなっていた。
「流れている間に出来たかなぁ」
少し不安になりながら私はまた星空を見上げた。すると、この場所に誰かがいるような気がして息をそっとひそめた。私以外の誰かがここに来ることはほとんど無いので、必死に声を探した。
「ねえ、あの子暗い顔してない?元気無いのかな」
「そんな時こそ私たちの出番よ」
ひそひそと話しているが、その内容は聞こえていた。よく見ると、小さな木の隙間から人影が見える。じっと見つめると、その人たちが木から少しずつ出てきた。
「初めまして」
「は、初めまして……」
急に話しかけられてオドオドしてしまった。私を見てくれて、話してくれたことに驚いたのだ。
「君、星が好きなの?」
「はい、好きです」
「良かった。実は、案内したいところがあって」
ウキウキしながら話を進められているが、私は今話している人が誰なのかがわからなかった。おとぎ話に出てきそうな美しい顔を二人ともしているから、学校にいたらきっと目を惹かれるだろうから、きっと知らない人だ。
「あの……あなたたち、誰?」
「ごめんごめん、自己紹介もしてなかった。私はメイト。よろしくね。こっちは弟のノック」
メイトがそう言うと、ノックは私の顔色を伺うようにお辞儀した。
日本人ではないのだろうか。でも日本語を話せている。私を透明人間のように扱わない。もしかしたら本当におとぎ話から来たような人なのかもしれない。そう思うと少しワクワクした。
「私は羽宮使歩。よろしくお願いします」
「敬語なんていいから、タメ口で話そ。あんまり年変わらなそうだし」
「あ、ありがとう。それで、案内したいところって?」
「興味ある?じゃあ、着いてきて。星空を見るのにここよりもっと良い場所だよ」
メイトが私のお気に入りの木に触れた瞬間、別の場所にワープした。
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