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シンゴ
「ジュエリーと言うのは、お母様の形見の指輪だと伺いましたが……?」
シンゴはベランダへ出て辺りを見回した。周りには覗きの出来そうな高いビルはない。
「ええェ、そうなんです。亡くなった母親の形見なので、どうしても探しだして欲しいんです」
瑠奈は深刻な顔で頼んだ。
「この写真の綺麗な方がお母様ですか?」
シンゴはドレッサーの上に置かれたフォトフレームを手に取った。幼い頃の瑠奈と美しい女性が映った写真だ。今の瑠奈とよく似て美人だ。
「ハイ、子供の頃、私がサファイアの指輪を欲しいとねだったら『十五歳の誕生日に上げる』と約束したんです。けれども母親は私が十歳の時に病いに倒れて……。結局、約束は叶えられず」
「なるほど、そうですか。わかりました」
シンゴは困惑気味にうなずいた。そんな話しを聞いたからには是が非でも探し出さなくてはならないだろう。
「ケッケケ、まァ任せてください。こう見えてもシンゴはただの小学生じゃないんですからね。これまでにも数々の難事件を解決して来たんですから」
なぜか、ハリーは自分のことのように胸を張って応えた。
「ハッハイ……」しかし瑠奈の反応は今ひとつだ。やはり小学生探偵では無理だと思っているのだろう。
「おいハリー。ちょっとハードルを上げ過ぎだぜ」
「フフゥン、なにしろシンゴは、織田信長の末裔なんですよォ……」
なおもハリーは自慢げにシンゴの紹介をした。
「え、信長の……?」
瑠奈は目を丸くして驚愕した。
彼女同様、たいていの人はシンゴが信長の末裔と聞くと驚いて聞き返してきた。
「鳴かぬなら解いてくれようホトトギス。天に代わってすべての謎を」
シンゴも彼女を励まそうと決め台詞を唱えた。
「あ、ハイ。お願いします」
瑠奈も歓んで笑顔を浮かべた。
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