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指輪
「ところで盗まれた指輪はお母さんの形見のサファイアだと聞いたけど実物はどんなのかな?」
シンゴが瑠奈に問いかけた。
「え、ええェ……、そうですね。これです」
瑠奈は慌ててタブレットの画像を見せようと操作した。
「そんなに慌てることはないですよ」
シンゴは小学六年生にしては落ち着いて応えた。
「これですねえェ……」
瑠奈がジュエリーの画像を提示した。
青く光り輝くサファイアだ。ハリーは横から画面を覗き込んできた。
「ヘェ、この青いやつか」
画像のジュエリーに指を差した。
「そうです。これはスターサファイアと言って、とても価値が高いそうなんです」
「ふぅン、でもさァ、サファイアはダイヤモンドやルビーに比べてそんなに高価じゃないんだろう」
ハリーは指輪の画像を眺めてボソッとつぶやいた。
「まァ、そうですね」
かすかに瑠奈は眉をひそめた。彼女も気分を害したみたいだ。
「よりにもよって、犯人は何でそんな安物のサファイアを盗んでいったんだろう?」
またハリーは茶化すように笑ってみせた。
「安物って言うのは言い過ぎだが、確かに他にもジュエリーがあったのにサファイアの指輪だけ持っていくのはちょっと変だな」
シンゴもうなずいた。
「ハイ、でも私に取っては他のルビーやダイヤモンドよりも価値があるモノなので一刻も早く取り返してもらいたいんです」
「解かってます。モノの価値は他人が決めるものじゃないですからね」
「まァねえェ。他人にはゴミのように見えても集めているヲタクからすれば、ダイヤモンドよりも価値があるものはあるからなァ」
相変わらずハリーは空気を読まないで、いらないことを口にするタイプだ。
「ゴミじゃないですけど」
瑠奈は少し不満な表情だ。
「いや、例えばだよ。そりゃァ瑠奈ちゃんにはダイヤよりも価値があるだろうけど価値の解からないドロボーなら、他のジュエリーと変わりないだろう」
ハリーも言い訳をした。
「そうですね」
渋々、瑠奈も納得した。
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