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指輪盗難事件
「やはり犯人はジュエリーの価値の解らないモノの仕業なんだろうね」
冷静にシンゴも分析した。
「まァね。普通のドロボーならついでに他のジュエリーも盗んでいくだろうしな」
ハリーは両腕で抱え込むようなジェスチャーをした。
「ええェ……」瑠奈も納得しうなずいた。
すぐ目の前のドレッサーにはダイヤモンドやルビーなどの高価なジュエリーが置いたままになっていたのだ。
「そうだな。サファイアの指輪ひとつを盗むために真っ昼間に七階の部屋へ忍び込むのはリスクが高すぎるからね」
またシンゴはベランダへ出て様子を伺った。この盗難事件は何かがおかしい。
「まさか犯人はドローンみたいに空から飛んできたワケじゃないだろうしな。ケッケケェ」
ハリーが茶化すように笑った。
「ンうゥ……、ドローンみたいにねえェ?」
シンゴは青く澄んだ空を仰いだ。春のうららかな日差しが眩しい。
青空を横切るようにひとすじの飛行機雲が見えた。
「ううゥン、空を飛んでか……。空を、あ、そうだ!」
一瞬、シンゴの脳裏にパッとアイディアが閃いた。
「え、なにか、わかったんですか?」
すぐさま瑠奈が訊ねた。
「ええェ、犯人は突き止めました」
「マジかよ。誰だ。犯人は。ストーカーかァ。隣りのヤツかァ?」
即座にハリーも身を乗り出して訊ねた。
「いや、犯人がわかっても今のところ指輪の在り処が解らないからね」
「指輪の在り処ですか……?」
「うン、もう少し時間をくれないか」
「時間を?」
「ああァ、罠を仕掛けて犯人をおびき寄せるから」
シンゴは自信満々に微笑んだ。
「あ、ハイ、お願いします」
瑠奈は美少年探偵に全幅の信頼を寄せて依頼した。
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