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事件解決
翌日、シンゴとハリーは早朝から罠を仕掛け指輪の盗難犯を突き止めた。
午後には無事に犯人から指輪を取り返し、依頼人の元へ手渡した。
「ハイ、忘れ物です。どうぞ」
シンゴは優しく笑みを浮かべてテーブルの上にジュエリーを差し出した。
「あ、本当に取り返してくれたんですね」
信じられないと言った表情で瑠奈は指輪を手に取った。
「フフゥン、これでよろしかったんですね。無くなったジュエリーは?」
「ハイ、では犯人が解かったんですか」
「まァあいにく犯人を捕まえることは出来ませんでしたが」
おもむろにシンゴはうなずき、照れくさそうに苦笑した。
「捕まえることは出来なかったッて? いったい誰が犯人だったんですか」
依頼人の瑠奈は恐怖と真相を訊いた。
「そうですねえェ」シンゴは腕を組み考えた。
「やっぱりストーカーだったんでしょうか。それともマンションの住人の人ですか?」
彼女は謎のストーカーに怯えているようだ。どうしても犯人を知りたいらしい。
「いいえ、犯人はカラスだったんですよ」
シンゴはベランダから青空を見上げ応えた。
「え、カラスですって、まさかァ?」
「そのまさかなんですよ」
「本当にカラスが犯人なんですか……?」
思わず彼女は目を丸くして聞き返した。
「ケッケケ、カラスはね。キラキラ光るモノが大好きなんだよ。咥えて巣へ持って帰っちゃったのさ」
ハリーがウインクをして解説をした。
「あ、そういえば……」瑠奈もそんなカラスの特性を聞いたことがあった。
「カラスなら防犯カメラに映ることはないし高層階の窓から瑠奈ちゃんに気づかれず部屋へ侵入して指輪を持ち去ることもできるだろう」
ハリーは、戯けて肩をすくめ笑った。
「あ、まァそうね」
「カラスはとても賢くて光り物を集める傾向があるんです。しかし指輪をふたつも三つも咥えてはいけない。だからテーブルに置いてあったサファイアの指輪ひとつを咥えて巣まで持って帰ったんですよ」
シンゴが、わかりやすく説明した。
「巣まで……、そうなのね。だから他のジュエリーには手を出さなかったのね」
「うン、だからその特性を利用してGPSつきの模造品でカラスをおびき寄せ、そのカラスの巣を突き止めたんです」
「うゥ……、GPSつきの模造品で?」
「あとは相棒のハリーが巣から指輪を見つけ出してくれたってワケですよ」
「そうそう、オレが指輪をね」
ハリーは自慢げに胸を張ってみせた。
「ありがとうございます。なんてお礼を述べたら良いか」
瑠奈は大切そうに指輪を胸に抱え頭を下げた。
「フフゥン、別に礼には及びませんよ。ボクは瑠奈さんのような美少女が哀しい顔をしているのを放っておけないだけですから」
小学六年生とは思えないキザなセリフだ。
「シンゴ君……」
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