ことの発端

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ことの発端

 2020年4月。新型コロナウイルスの影響により出された緊急事態宣言を受けて、街中から人が消えた。いつもなら活気のある駅からは人が消え、テーマパーク、居酒屋、カラオケ店など人が集まり愉しむありとあらゆる場所はシャッターに閉じられ、リモートワークを推し進める会社が徐々に出始めていた。  かくいう私も、家の中でブルーライトの画面と睨めっこする日々を続けていた。  異変が起きたのは5月の頭のことだった。私は在宅ワークに追われ、パソコンとにらめっこを続けていた。 ――おかしい……。  私はそう感じた。パソコンとずっと向き合いっぱなしなのが原因なのか、頭がとにかくズキズキと痛む。そして目の痙攣が止まらない。しばらく横になって休息を試みたが、目の痙攣も頭痛も止まらなかった。家にある目薬をさしてみても効果がない。私はたまらなくなり、 「目の痙攣 頭痛」  これらの文字を検索サイトに打ち込む。すると、様々な病名が出てきた。 ・眼精疲労 ・VDT症候群 ・眼瞼ミオミキア  どれもこれも、聞いたことのない病名である。そしてどこのサイトにも、 「お近くの眼科医の受診をお勧めします」  と記されていた。 ――やっぱり、かかっておいた方がいいよな……。  私はそう思い、再び検索を始めた。  検索の結果、1件目に留まった眼科があった。N眼科だ。5段階評価で5のコメントがいくつも並んでいる。最寄り駅から徒歩1分という絶好の立地条件だ。 「駅からはとても近いです」 「完全予約制なので、待ち時間がほとんどありません」 「毎年検査をお願いして、目の異常がないか見てもらっています」 「素人にはわからない病気でしたが、出してもらったお薬が効いてちゃんと治してもらえました」 「丁寧に診察してもらえます」  これなら、かかってみてもよさそうだ。私は早速、N眼科に連絡を入れた。 予約の打診に対し、電話受付の女性が答える。 「次の金曜日でしたら、予約が空いています」  私は早速、予約を入れた。その際に、電話口から意外な言葉をかけられた。 「血液検査の結果、お持ちですか?会社などの健康診断の結果でも構いません」  血液検査が一体なぜ必要なのか、その疑問は再び発せられた女性の言葉によって解消された。 「当院では一旦、初診の方については眼の状況を全て確認させていただいております。それによって糖尿病性網膜症など思わぬ病気の早期発見につながることもありますので」  私は納得できた。 「素人にはわからない病気でしたが、出してもらったお薬が効いてちゃんと治してもらえました」  インターネットの口コミにあったこの言葉の裏付けが取れた気がした。 「かしこまりました。では次の金曜日に伺います」  私はそう告げ、電話を切った。  とにかく、まずは原因究明に向かうしかない。
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