大学病院と町医者

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大学病院と町医者

 大阪の地下鉄の駅は4カ所以上の出口があるところの方が圧倒的に多い。T駅も例外ではなく、駅についてからM眼科に着くまで10分近くかかった。ビルの1階に看板が立てられており、その中に入ると席はほとんど埋まっていた。受付にある案内板には検査待ちが4名、診察待ちが6名、会計待ちが3名と表示されている。かといって仕事のスピードが遅い人が集まっているのかというとそうではなく、薄緑色の制服を着た職員さん達が皆きびきびと動いている。 「ええと、先日お電話したえふえふと申します」  私はそう言って受付の職員さんに保険証と紹介状、そしてもらってきた薬の説明書や診療報酬明細書などありったけの資料を手渡した。 「ではこちらの問診票をお書きになってお待ちください」  受付の職員は私にそう告げ、バインダーを手渡した。  ひととおり問診票を書き終わり、ベンチへと戻る。室内を見渡すと薄型のテレビが受付の上に掲げられていた。そこには院長であるM先生の自己紹介にはじまって海外留学などを含めた経歴紹介、他の職員の紹介などが入れ替わり立ち替わり流されている。 ーーおや?  私はふと疑問に思った。T駅周辺のホテルのプロモーションビデオが流れ始めたのだ。値段がリーズナブルなホテル、朝食バイキングが充実しているホテルなどいくつかのホテルが紹介されたあと、テロップが表示された。 「遠方から手術でお越しの患者様はお身体の負担を減らすためにも近隣のホテルをご利用ください」 ーーここの患者さん、全国から来ているのか……。  私は目を見開いた。そしてその後、画面が切り替わって再び文字が映される。 「私どもは、町医者でありながらも大学病院と同等の診療ができる病院を目指しています」  よっぽどの自信がないと書けない言葉だと思う。そしてその自信をインターネットの評価は裏付けていた。安心と不安が入り混じっている。腕は確かなのだろう。でも逆に、ここで眼圧を下げるのは無理だと言われたら、今度こそどうしたらいいのか分からない。 「えふえふさん」  受付から私の名が呼ばれた。 「はい」 「本日はセカンド・オピニオンではなく、転院という形で伺っています」 「そうです」 「病状としては、緑内障の中期と、ドライアイということでお間違いないですか?」 「はい。チモロールとウノプロストンと、あとレボフロキサシンという目薬を処方されています」  私がそう答えたあと、受付の女性が発した言葉に私は耳を疑った。 「この紹介状、緑内障の『』と書かれていますよ」 「はぁぁぁぁぁ!?」  私は思わず、大声を上げてしまった。
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