13人が本棚に入れています
本棚に追加
答え合わせ
「それでは視野検査を始めますので、眼鏡を外してください」
2週間後、私は再度M眼科を訪れていた。今日は視野検査、M先生の「答え合わせ」の日である。先生からの指示通り、N眼科で出された目薬はここ2週間一切さしていない。
「では、右目から検査しますので、左目にガーゼを貼らせてもらいますね」
看護師さんはそう言うと、私の左目にガーゼを押し当て、テープで止めた。その後、看護師さんは私の目の前に立っているスティックにレンズを差し込む。
「レンズなんですけど、こちらと」
看護師さんはそう言い、レンズをはめ替えた。
「こちら。どちらのほうが見えやすいですか?」
「後のほうが見えやすいですね」
「でしたらこのままのレンズで検査しますね。ではまず検査の前にテストを行います。光ったと思ったらボタンを押してくださいね」
看護師さんはそういうと、私にボタンを渡してきた。機械音が鳴り、中央に小さな光が灯る。そしてしばらくしたらまた機械音が鳴る。これを数回繰り返したところでテストが終わった。
「多分なんですけど、ボタン…………押しすぎだと思います」
看護師さんはそう言いながら微笑んだ。
「光ってないところでも押しちゃっていますか?」
「はい。どうしても音が鳴ったり光っているように錯覚したりして押してしまう方もいるんですが、ちゃんと見えた!と思ったところだけ押してもらえば大丈夫です。まばたきをしてもらってもいいんで」
「でもまばたきしている間に光ったら…………」
「そこは機械も計算済みです。何度か同じ場所に光が点灯するようにプログラミングされていますんで。気楽に受けてください」
「ありがとうございます」
「では正式な検査に移りますね」
看護師さんがそう言い、検査が始まった。丸い画面の中央、やや左下、右上、左、真下、いろいろな箇所に光が灯る、光を見つけるごとにボタンを押す。何度やってもなれないし、集中力も神経も使う。ただ、N眼科で検査を受けたときとは違って画面がはっきり見えるためストレスのかかり方はけた違いに少ない。
数分経っただろうか。看護師さんが私に声をかけてきた。
「休憩、なさいますか?この検査、だいぶ集中力使いますんで」
「いいんですか?」
「はい。必要に応じて休憩をとっていい検査ですから」
「では。お願いします」
私はそう言い、一旦検査を中断した。検査時間中に休憩をとっていいなど、N眼科では一度も言われていない。
「では再開しますね。お顔は所定の位置に合わせて、動かさないようにしてくださいね。じゃあ、始めます」
検査が再開した。先ほどと同じく円形の画面のいたるところに光る点を追っていく。そして数分後。
「右目の検査、これで終了です。では次、左目の検査をしますね」
看護師さんはそう言うと左目のガーゼを外し、今度は右目にガーゼを貼り付けた。同じようにレンズを立てた状態で検査が進み、1回の休憩を挟んでつつがなく終了した。
「はい、それでは検査終了です。だいぶ神経使ったでしょう。お疲れさまでした。では診察室前のベンチでお待ちください」
私はそう促され、ベンチへ腰を下ろした。
M先生が言う「答え合わせ」の時間まで、あと少しだ。
最初のコメントを投稿しよう!