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終章~S薬局にて~
「なるほど。腰が痛むのですね。では湿布薬と頓服の痛み止め、出しておきますから。お大事に」
私は整形外科でこう言われ、久々にS薬局へと顔を出した。S薬局ともいろいろあったが、十分に誠実な対応はしてもらったと思っているし、何より家から通いやすいのだ。
女性のベテランの薬剤師さんが私に視線をよこした。
「えふえふさん。今日は湿布薬と頓服の痛み止め、それと胃薬が出ています。お会計が……」
薬剤師さんが説明をしてくれているところだったが、隣から声が聞こえてきた。この声は聞き覚えがある。以前何度か私に応対してくれた若い女性の薬剤師さんだ。
「本日の目薬はこちらピンクの蓋のチモロール0.5%と…………」
私が過去使っていた目薬の名前が読み上げられた。どうやら目の前の高齢の男性はN眼科にかかっているようだ。私は少し気になりつつも会計を済ませ、店をあとにしようとした。そのときだった。高齢の男性が声をあげた。
「えっ?2回なんですか?先生から1日6回させって言われたんですけど」
私の肩が不意にビクンと動いた。Nはどうやらこの期に及んで誤った投薬指示をしているらしい。すると女性が質問に答えた。
「いえ。こちらの薬は1日2回です。説明書の通りでお願いします」
私はほっと胸を撫でおろした。
薮医者はどこまでも薮医者である。きっとNはこれまでもでたらめな投薬指示を繰り返してきて、そしてこれからもずさんな診察も山ほど繰り返していくのだろう。
壮大な時間と、かなりのお金を無駄遣いした。
私たちは、賢くならないといけない。
疑問に思うことは調べ、ほかの人の意見を聞き、おかしいと思うことについては徹底的に考えなければならない。
自分の未来を変えられるのは自分自身だけだし、
自分を救えるのは、自分自身だけなのだから。
【終】
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