ことの発端

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「えふえふさん。まずは眼圧の測定から始めます」  私は促されるまま丸椅子に座り、眼圧計におでこを当てた。プシュッ!プシュッ!という空気が黒目に当たるあの感覚は今でも心地良くはない。眼圧の測定が終わると今度は近視の度合いを見る検査だ。両目にレンズを当てて気球の絵柄をのぞき込む。最初にぼんやりしていた気球の絵柄がどんどんくっきり描かれるようになっていく。右目が終わったら次が左目。左目のピントが合ったところで、看護師さんから声をかけられた。 「では次、視力検査を行いますね」  私は視力検査板から数メートル離れたところにある丸椅子に座り、目隠しの黒い棒を手に取った。私は眼鏡なしでは0.1のランドルト環すら見えない。看護師さんが手で持つパネルに書かれた輪っかの開いている方向を答えるだけで裸眼での検査はあっという間に終わった。次に視力検査用のメガネをかける。目がピクピクする状態を我慢しながらも検査を続け、何度か視力矯正用のレンズを付け替えながら検査を終えた。 「では次、涙の量を測る検査をしますね」  看護師さんに促され、今度は目の下部に小さな試験紙のようなものが挟まれた。白目に試験紙が少しだけあたり、痛覚が刺激される。 「ちょっと痛いかもしれませんけど我慢してくださいね」  数秒経ったのち、試験紙が再び取り除かれた。 「では診察室の奥にお越しください」  私は促されるまま暗室の中へと入る。 「ではメガネを外して、こちらの台に顎を乗せてください」  顎を乗せると、目の前に円形状の画面があった。円の中は真っ黒である。看護師さんが私に筒状のボタンを手渡してきた。 「これからそれぞれ片方の目を隠して、画面内をずっと見てもらいます。光が見えたらこのボタンを押してください」  私は筒を握りボタンに親指を載せると、画面の中を覗き込んだ。真ん中、左、右上……小さな光が様々な場所で光り、そして消えていく。強い光もあれば光っているかどうかわからないような小さな光もあるが、光がぼんやりとしか見えなくてボタンを押すタイミングに迷う。 「はい。では次、左目になりますね」  看護師はそういうと右目のガーゼを外し、左目に新たなガーゼを貼り付けた。左目も右目と変わらず淡々と検査が行われていく。光はやはり、ぼんやりとしか見えない。 「はい。では検査終わりです。では最後に目の写真を撮らせてもらいますね」  場所を移動し今度は撮影機材の前へ。 「まばたきをやめてください。では撮ります……はい次左目……」  写真の撮影はあっという間に終わり、室外で待つよう告げられた。  待つことおよそ5分。 「えふえふさん。中へどうぞ」  男性の声が聞こえてきた。どうやら診察が始まるようだ。
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