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投薬開始
いくら治らないといっても、何もしないければ結果は自ずとついてくるもの。私は点眼を開始する。指示書に書かれているようにミケランを寝る前に1回。ほかの薬についても指示通りに点眼し、そして服用を行った。そして3日はあっという間に過ぎ去った。在宅とはいえ私にも仕事はある。私はなんとか予約の時間までに仕事を片付け、病院へと向かった。
「まずは眼圧の測定を致しますね」
この間と同じように私は眼圧計の前に腰を下ろす。プシュッ、プシュッという音と共に測定はあっという間に終わった。
「次に視力検査から受けていただきます」
今日も視力検査が行われた。前回と変わらず裸眼で見えるのは両目でやっと0.1まで。矯正視力でもほぼ視力は変わらないだろう。
「ではその次に、こっちの視力検査を行いますね」
視力検査が終わると、私は手元に1冊の本を渡された。本の中にはいつも受けている視力検査と同じような隊列でランドルト環が並んでいる。
「この検査用眼鏡をかけて、背筋を伸ばした状態で、こちらの本を持ってください」
私は言われた通りの態勢をとる。
「一番上の段から、どの方向に穴が開いているのか言ってください」
「わかりました。右、上、下……」
読み上げは一番下の段まであっという間に終わった。
「では診察になりますので、しばらくお待ちください」
私は診察室脇の丸椅子へと促された。
「えふえふさん」
私の名が呼ばれる。中に入ると、前回と同じように顕微鏡の台に顎を載せるよう促された。
「ちゃんと目薬つけてました?」
「はい」
「眼圧、前回より上がっているんですよ。今日の眼圧は右が18で、左が19。前回言ったように、12から13まで下げないと駄目だから」
N先生はそう言いながら私の目からまつ毛を抜いた。
「とりあえず、このミケランで様子を見ますから。また1週間後に来てね」
N先生はそう言うとカルテを閉じた。
「先生、私は緑内障なんですか?」
ざっくばらんに聞いてみる。
「それかどうかも含めて、長い目で状態を見ることが必要です。とりあえず、すぐに手術をしないといけない状態ではないのでそこは安心してください」
N先生は閉じられたカルテに視線を落としたままそのように答えた。私はただ、診察室をあとにするほかなかった。
「すぐに手術をしないといけない状態ではないので安心してください」
このフレーズを聞いて安心できる患者はどのぐらいいるのだろう?
私は39歳。もし緑内障だとしたら、これからおよそ40年に渡る一生のつきあいを緑内障としていかなければならないわけだ。
でも、つべこべ言っていても仕方ない。
とにかく、治療を続けるしかないのだ。
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