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三好美波、今日から華の高校生活!高校生になったら、恋に部活に頑張るんだ!
って思ってたのに……。
「みーなみちゃん!高校、一緒に行こう」
どーしてコイツがいるのよ!
「いい、一人で行く」
「なんでさー。俺達マンション隣同士だろ?それで高校同じって何かの縁じゃないか〜」
「アンタが勝手に真似をしたんでしょ?」
「だって、ほら、俺美波ちゃん好きだし?」
はぁ……。コイツは……。
仕方ないから一緒に高校に行った。
マンション202号室。北沢幸。中学2年の終わり頃に私のマンション201号室の隣に引っ越してきた。
中学はあと1年だったから転校はしないで自転車で40分かけて通学してたみたい。
高校はこのへんで探すとは言ってたけどまさか同じになるとは……。
この辺5つも高校があるというのに……。
「あ、あっちに行列ができてる!ちょっと行ってくる」
「どうぞご勝手に」
一緒に登校していると、幸は人だかりができているほうに一目散。
アイツは初めて会ったとき、私に好意を抱いたらしく……。会う度に告白されている。
そしてコイツは、ムカつくことに……。
「ねぇ、三好さん!だよね?今一緒に歩いてた人誰?!」
後ろから見覚えのある女の子に声をかけられた。
「え?うーんと……。友達?」
この人は確か同じ中学だった……。誰だっけ?クラス同じじゃなかったからわかんないや。
「へー!めっちゃイケメンじゃん!」
「そうかな?」
ムカつくことに、幸は結構モテるのだ。
「私、同じ中学だった、西広マリ。同じ高校だからこれからよろしくね」
「うん。よろしく」
あぁ……。まただ。幸 目当てで寄ってくる人。
中学3年の時、学校まで幸が迎えに来たことがある。それで隣に幸が住んでるってことがバレて、近寄ってくる人がたくさんいた。
幸が私に一途だと知ってからは離れていった。
西広さんもきっと……。
さーてと、入学式も終わったし、気を取り直して部活見学行こーっと!
私は一人、校舎裏の庭にある部活動掲示板を見に行った。
「バスケ部、入りませんか?」
「是非、女子サッカー部へ」
「弓道、楽しいですよ〜」
「吹奏楽部で一緒に音楽を奏でませんか?」
「陸上部で一緒に汗と涙の青春を……!」
先輩たちは次々にパンフレットを私の手に渡してくる。
掲示板についた途端に先輩たちの勧誘がすごかった。
たくさんパンフレットもらっちゃった……。
「あ、美波ちゃんここにいたんだ〜」
「うわ、幸……」
どこからともなく幸が現れた。
「君も良かったらバスケ部に」
「男子サッカーもあるよ」
「弓道部に是非」
幸も先輩たちに勧誘され始めた。
「すみません。先輩。俺は部活は遠慮します。部活に入ったら美波ちゃんとの時間がなくなってしまうので……!俺は美波ちゃん1筋なんです……!」
「ちょっと幸!」
幸が肩を組んできた。
あー、もうこれだから……。
「美波ちゃん、一緒に帰ろう」
「私、用事あるから」
「えー?俺も一緒に……」
「結構です」
私は女子トイレに逃げた。
さて、部活見学にでも行こうかな。
私はパンフレットを一つずつ見た。
えーっと、バスケ、サッカー、弓道、吹奏楽……。
中学はテニス部だったけど、バスケも気になってたんだよね。
ちょっと行ってみようかな。
体育館につくとバスケ部が男女にわかれてパス練をしていた。
体育館の真ん中にネットが張られていて、そこで男女分かれているみたい。
体育館全面、バスケ部が占めていた。
手前が男子で奥が女子。
あ……。カッコイイ。思わず見惚れてしまった。
「危ない!!!」
「えっ?」
突然、何が起きたのかわからない。
「大丈夫?」
「え?えっと……」
「ボール、あたってない?」
どうやら、私にボールが当たりそうになったのをこの人がキャッチして助けてくれたみたい。
「大丈夫です」
「良かった」
助けてくれた人はニコッと笑った。
先輩かなって思ったけど、上履きの色が1年生。
「休憩!」
「はい!」
部長らしき人の掛け声でみんなが次々と休憩していく。
「さっきは怖い思いさせてごめん。ボール、本当に当たってない?」
休憩中、さっき助けてくれた人が声をかけてくれた。
「大丈夫です!当たってないです!ほら、元気」
私は体を動かして伝えた。
「ハハッ。よかった」
その人は笑っていた。
「1年生?ですか?」
「うん!部活動推薦で入ったからもう今日から部活なんだ」
「そうなんだ。バスケ、楽しい?」
「楽しいよ。女バスも募集してるみたいだし良かったら」
「うん!考えてみるね!あの……何組?」
「あ、俺はC組の坂城東輝。君は?」
「あっ、同じクラス!C組の三好美波」
「同じクラスか!これからよろしく」
「うん、これからよろしく」
入学して1ヶ月。私は坂城くんのことを目で追っていることに気がついた。
幸目当てじゃない人と話したのが久しぶりだったから?助けてくれたから?好き……だから?
今日もカッコイイ。
坂城くんのこともっと知りたい。でも、話すきっかけがなかなかない。
結局しっくりくる部活がなくて入らなかった。
今からでもバスケ部に入る?いやでも、人目当てって、ダメだってことわかってる。
それに男女分かれてるし。
「美波ちゃーん。ごめーん」
「西広さん?」
A組の西広さん。あの時声をかけられてから何度か話している。
「ごめん、数学の教科書貸して〜。忘れちゃって……」
「え?いいよ。はい」
「ありがとー!」
西広さんはC組の教室内を顔をグルっと動かしてみてから私にお礼を言って帰っていった。
今は幸いないからな。幸はF組だけど、結構な割合でC組に来ている。それを狙っていたのかな。
入学して2ヶ月。私はというとやっぱり坂城くんのことを意識している。告白なんてできない。
こんな気持ち初めてだもん。
「美波ちゃーん!やっほー」
「あ、西広さん」
西広さんはC組に来ては私と話して帰っていく。最近は頻度が高いかも?
西広さんはたまに周囲を気にしているけど、なんでだろう?
やっぱり幸を探して……?それならF組に行けばいいのに……。
「みーなみちゃん!」
「ゲッ……。幸……」
幸がF組からやってきた。
「なんだよその顔は〜。せっかくF組から来たというのに」
「別に頼んでない。で、なんの用?」
「用事がある時じゃないと来ちゃいけないのかい?」
幸が肩を組んで言った。
「ふふっ。本当に美波ちゃんと仲がいいんだね」
西広さんは笑っていった。
「君にもそう見えるかい?」
はぁ……。これで西広さんも潮時?みんな、幸が私にしか目がないってわかると去っていく。
西広さんといるとき、楽しかったな。
友達って思えた。
西広さんも少しだけそう思ってくれていたら嬉しいな。
「うん!見えるよ!最初会ったときから。ずっと仲いいなって」
「本当?!それはうれしい」
私と仲がいいと思われて嬉しそうな幸。
え……?幸と近づきたいから私に声をかけたんじゃないの?
「ねぇ、美波ちゃん、今日駅前の喫茶店いかない?」
西広さんが私にいった。
「え?」
「今日から新しいメニュー追加なんだ!パンケーキ美味しそうで。数学の教科書のお礼もまだできてないし」
「幸、甘いのそんな食べないよ?」
私は小声で教えた。
「え?幸くん?幸くんも来るの?」
「え……?もしかして、私だけを誘ってくれてるの?」
「もちろん!美波ちゃんとずっと話したかった」
キーンコーンカーンコーン
「あっ、チャイム。私クラス戻るね!」
西広さんはA組に戻っていった。
「ちぇ〜。もうチャイム」
「幸、お前も早く戻れ」
西広さん……。
『美波ちゃんとずっと話したかった』
このあとの授業は集中できなかった。
「こんなに木ばっかりのところに喫茶店があるの?」
「あるよ!森の中に1軒だけあるんだ。その名も森の喫茶店」
「そのままだね」
西広さんと一緒に木と草をかきわけながら進んでいくと本当に1軒だけ喫茶店が建っていた。
「ここだよ!さ、入ろう」
入学して3ヶ月。私は今、ピンチに見舞われています。
「じゃあ今日からこの席で決まりでお願いします」
学級委員の言葉に息を呑む。
なんと隣の席が坂城くんなのだ。
心の準備ができていない。
「あ、隣、三好じゃんよろしく」
「よろしく……」
「なんか元気ない?」
「そ、そんなことないよ?元気元気」
私は体を動かしてまた言った。
坂城くんは笑っている。
なんかこんなこと前にもあったな。
緊張してあの時ほど上手く話せない。
「美波ちゃん!今日も喫茶店行こー!」
「西広さん」
西広さんはというと、ちょくちょくC組に遊びに来ては私を誘ってくれる。
「今日から新作のパフェが出るんだってー!」
「本当?!美味しそう」
「みーなみちゃーん」
幸も相変わらずC組に遊びに来る。
「なに?」
「まったく、冷たいな〜。そんなに睨みつけないでよー」
「用事がないならクラスに帰って」
「え〜」
「はぁ……!やっとついた!」
「相変わらず木が多いねぇ」
私達は何度かこの森の喫茶店に来ているけど、未だに慣れない。
「いらっしゃいませ〜」
私達はパフェを堪能しながらお話をした。
「ねぇ、美波ちゃん私のこと西広さんって呼ぶの、そろそろやめよ?」
「えっ?」
「マリって名前でいいよ!美波ちゃんにはマリって呼んでほしい」
「ま……り」
なんか恥ずかしい。こんな友達、小学生依頼。
「美波ちゃんかわいー!」
「私のことも美波でいいよ。マリ!」
「え?!み、美波……。」
「マリもかわいい」
こんな他愛のない話。いつぶりだろうか。
マリになら坂城くんの相談してもいいかな。
「ねぇ、マリ」
「うん?」
「こ、このパフェ美味しいね!!」
やっぱり言えないよ。
「え?うん。なんか言おうとしたでしょ」
バレてた。顔が熱くなる。
「好きな人ができた?」
「かもしれないって言ったじゃん。かもだよかも」
「美波、好きかもしれないって思った時点でもう好きなんだよ」
「え……。」
「で、誰?幸くん?」
「いや、違う」
「即答……。それはそれでかわいそう」
「同じクラスの……」
「同じクラスの!!?」
マリが興味津々。
「坂城東輝くん……」
「えっ?」
「入学式の日に部活見学しててボールが当たりそうなのを助けてくれたんだ。」
「そうなんだ……」
顔が熱くなるのがわかる。
マリはコーヒーを一口飲んだ。
「ちょっと、トイレ行ってくるね」
「うん」
「美波。言いにくいんだけどさ」
「うん?」
トイレから帰ってきたマリがすごく深刻そうな顔をしている。
「坂城東輝って、私の……」
「うん」
「私の彼氏なの」
「えっ」
マリが言葉を発した瞬間、窓の外が光ってゴロゴロと大きな音が鳴った。
雷だ。雨も降ってきた。
まるで私の心を表しているかのようだった。
マリの彼氏?
その事実がわかって、悲しい気持ちにもなったけど、同時に少しだけ、少しだけ嬉しかった。
マリが本当に幸目当てで近づいてきた人じゃないってわかった気がしたから。
「美波、こんな私でも友達のままでいてくれる?」
「え?」
「私、ずっと、中学の頃からずっと美波と仲良くなりたかったんだ。でも、いつも一人でいるから一人が好きなのかな?とか美波と仲良くなった人も離れていったみたいだったから、美波は望んで一人になってるのかなって」
「そんな……」
外の音は私達の話関係なく騒がしくなる。
「幸くんが羨ましかった。美波にあーやっていつも近づいて。幸くんといるところを初めて見たとき、チャンスだと思った。話の話題になるって」
「そうだったんだ。最初は幸目当てなのかなって」
「え?」
「私、中学2年の終わりのときにね、幸がマンションの隣に引っ越してきて、たまたまマンションの外で話しているのをクラスの子に見られたことがあるの。それで幸目当てで近づいてきた人がたくさんいて……。」
「そうだったの……?」
「マリは違うクラスだから知らないかもしれないけど。それで何人か幸に私から好きって伝えてほしいって。かわりに告白してほしいって頼まれたことがあるの。その度に幸は、その……自分で言うのもなんだけど、私のことしか見てないって……。それをクラスの子に伝えるのが気まずくて、嫌でしょうがなくて……。だから……」
「私ね、東輝と付き合って、会話が減っちゃった時があって、C組まで様子を見に行ったときもあったの。幸くん目当てでC組に行ったことはないけど正直彼氏目当てでC組に行ったことがある。でも、美波と話したいって思ったのも事実で」
私は無言でマリを抱きしめていた。目からは涙が溢れていた。
マリの顔は見えないけど、私の腕に温かい水がついたのがわかる。
気がついたら外の音が鳴り止んでいた。
「帰ろうか」
「うん!」
外には虹が輝いていた。
西広マリ。今日から高校生です。
中学の時、他校だけどできた彼氏がいます。
なんと今日から同じ高校です!
とはいえ、私の彼氏、坂城東輝は自転車登校だから私は一人で登校なんだけどね。
「行ってきまーす!」
元気よく挨拶をして外を出た。
学校も近づいてきたあたりで男女2人組で登校している人を見かけた。
いいなー。彼氏と一緒に登校かな?
あっ、あれは。同じ中学の三好美波さん。
三好さんは一人でいることが多くて仲良くなりたかったけど、結局声をかけられずに終わっていた。
一緒にいるの彼氏さんかな?
彼氏さんがどこかへ行ったタイミングで声をかけに行った。
「ねぇ、三好さん!だよね?今一緒に歩いてた人誰?!」
「え?うーんと……。友達?」
友達なんだ。
「へー!めっちゃイケメンじゃん!」
「そうかな?」
まぁ、彼氏ってこと隠してるのかもしれないし、イケメンって言われて嫌な人はいないよね。顔はよく見えなかったけど。
それに、三好さんと一緒にいるんだもん。イケメンに決まってる。
「私、同じ中学だった、西広マリ。同じ高校だからこれからよろしくね」
「うん。よろしく」
三好さんはなんだか寂しそうな顔をしている。どうしてだろう?私の気のせい?
入学して1ヶ月が経った頃。なんだか最近東輝が冷たいような気がする。
付き合って半年。倦怠期ってやつ?
それとも……。別れたいって思われてる?
ただ、心を許してくれているだけ?
他に好きな人ができた?
あー、もー、考えるの疲れた。
実際にクラスに行っちゃえばいいんだ。
でも、いきなりC組に行ってもな。
あ、そうだ。
「美波ちゃーん。ごめーん」
「西広さん?」
美波ちゃんもC組。ちょくちょく遊びに行ってるんだ。
「ごめん、数学の教科書貸して〜。忘れちゃって……」
「え?いいよ。はい」
「ありがとー!」
C組の教室内を顔をグルっと動かしてみた。
えーっと、東輝は……。
男友達と楽しそう。
『お前好きな人いんの?』
『A組に彼女いる』
『は?お前聞いてない』
『取ろうとされたら困るから人に言ってない』
聞こえてきた会話。
『取ろうとされたら困るから人に言ってない』
なんだ。まだ私のこと思っててくれてた。
ホッとして涙が出そうだったからそそくさと帰った。
入学して3ヶ月。美波ちゃんと仲良くなれた気がする……!!
喫茶店にも行ったし、もう友達だよね?
でも何か引っかかる。
今日も喫茶店に行くんだ!
「いらっしゃいませ〜」
私達はパフェを堪能しながらお話をした。
美波ちゃんは私のこと西広と呼ぶ。それだ。なにか引っかかる理由。それだと仲良くなれた気がしない。
「ねぇ、美波ちゃん私のこと西広さんって呼ぶの、そろそろやめよ?」
「えっ?」
「マリって名前でいいよ!美波ちゃんにはマリって呼んでほしい」
「ま……り」
恥ずかしがってる。かわいい。
「美波ちゃんかわいー!」
「私のことも美波でいいよ。マリ!」
「え?!み、美波……。」
呼び捨てってなんか新鮮。
「マリもかわいい」
他愛のない話。楽しい。
「ねぇ、マリ」
「うん?」
「こ、このパフェ美味しいね!!」
なにか隠してるな。
「え?うん。なんか言おうとしたでしょ」
美波の顔が赤くなる。
「好きな人ができた?」
おぉ!美波にも春が!ダブルデートとか出来たりするかな?
「かもしれないって言ったじゃん。かもだよかも」
「美波、好きかもしれないって思った時点でもう好きなんだよ」
私も東輝のときそうだったから。
「え……。」
「で、誰?幸くん?」
いつも一緒にいるもんね。てかまだ付き合ってなかったんか
「いや、違う」
「即答……。それはそれでかわいそう」
幸くんじゃない……?
「同じクラスの……」
「同じクラスの!!?」
「坂城東輝くん……」
「えっ?」
う、そ。私の彼氏……???
「入学式の日に部活見学しててボールが当たりそうなのを助けてくれたんだ。」
「そうなんだ……」
美波の話が入ってこない。
マリはコーヒーを一口飲んだ。
少し落ち着こう。
「ちょっと、トイレ行ってくるね」
「うん」
どうしよう。言わないとだよね。
そういえば私に彼氏がいること美波に言ってない。
でも、わざわざ言うことでもないもんな。
言わなきゃ。でも。私と友達でいてくれるかな?
黙ってた私と……。言わないほうがいい?でも、ここで黙ってたほうが……。
あー、言わなきゃ。言わなきゃ。
「美波。言いにくいんだけどさ」
「うん?」
深呼吸。深呼吸。
「坂城東輝って、私の……」
「うん」
「私の彼氏なの」
言ってしまった。
「えっ」
美波困惑してる。
私が言葉を発した瞬間、窓の外が光ってゴロゴロと大きな音が鳴った。
雷だ。雨も降ってきた。
まるで私の心を表しているかのようだった。
「美波、こんな私でも友達のままでいてくれる?」
「え?」
「私、ずっと、中学の頃からずっと美波と仲良くなりたかったんだ。でも、いつも一人でいるから一人が好きなのかな?とか美波と仲良くなった人も離れていったみたいだったから、美波は望んで一人になってるのかなって」
「そんな……」
外の音は私達の話関係なく騒がしくなる。
「幸くんが羨ましかった。美波にあーやっていつも近づいて。幸くんといるところを初めて見たとき、チャンスだと思った。話の話題になるって」
「そうだったんだ。最初は幸目当てなのかなって」
「え?」
「私、中学2年の終わりのときにね、幸がマンションの隣に引っ越してきて、たまたまマンションの外で話しているのをクラスの子に見られたことがあるの。それで幸目当てで近づいてきた人がたくさんいて……。」
「そうだったの……?」
「マリは違うクラスだから知らないかもしれないけど。それで何人か幸に私から好きって伝えてほしいって。かわりに告白してほしいって頼まれたことがあるの。その度に幸は、その……自分で言うのもなんだけど、私のことしか見てないって……。それをクラスの子に伝えるのが気まずくて、嫌でしょうがなくて……。だから……」
「私ね、東輝と付き合って、会話が減っちゃった時があって、C組まで様子を見に行ったときもあったの。幸くん目当てでC組に行ったことはないけど正直彼氏目当てでC組に行ったことがある。でも、美波と話したいって思ったのも事実で」
美波に抱きしめられた。目からは涙が溢れていた。
美波の顔は見えないけど、私の腕に温かい水がついたのがわかる。
気がついたら外の音が鳴り止んでいた。
「帰ろうか」
「うん!」
外には虹が輝いていた。
三好美波。大学生4年生。
プップー
クラクションの音がマンションに鳴り響く。
幸が車で迎えに来た。
私が助手席に乗り込んだ。
「やっと、振り向いてくれたのかい?美波ちゃん」
「べっつに〜?早く、マリと坂城くんを迎えにいこ!」
「お待たせ〜!マリ!坂城くん!」
「久しぶり〜!」
マリと坂城くんが後部座席に乗る。
今日は高校のときの思い出の場所。森の喫茶店に夕食を食べに行きます。
「あー、お腹空いた」
「なに食べたい?」
私が聞いた。
「うーん、美波ちゃんが食べたいなっ」
「今日はピザを食べます」
「相変わらずラブラブだね〜」
私達は当時を思い出しながら喫茶店へと向かった。
空にはあの時と同じくらいの虹が架かっていた。
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