十月十日

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 【それ】は血を垂らし、そのどす黒い塊は俄かにアスファルトへと消えて、逃げるように皇居の内堀へと向かおうとした。後ろから遠田は追いかけていく。四百十二号線との交差点に【それ】が出ようとした折、彼は射貫いた。靄が弾けて、歩道にタールのようなものが広がり、地面に溶けていった。  彼は駆け出し、最後に溶けていこうとした【それ】を掬い取るように持ち上げて、すすり上げた。マスクを超えてタールは彼の口の中へと消えていく。  遠田はそこに花を添えて、手を合わせてから立ち上がった。
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