神無月の頃

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 それから暫くして、遠田は神社から少し離れた、早稲田通りの公共喫煙所にいた。彼が待ちわびた時間をゆっくり噛み締めようと煙草を取り出したとき、その彼の袖を女が引っ張ってきたので、袖を引っ張ってきた巫女装束の彼女の方を振り向いた。 「月子、どうした?」  彼女の右手に封筒、左手は空手だった。遠田はうんざりしながら封筒を受け取り、その封筒を風除けにしながら煙草に火をつけた。そして口に咥えながら封筒を開けて中身の無機質な書面で次の依頼を確認した。遠田は大して金にならない面倒な依頼を確認して煙草を深く吸い、月子と呼ばれた彼女は立ち去らないどころか左手は未だに空手のまま遠田に突き出された。その手をみて遠田は仕方なく煙草を一本与えた。 「ありがと。」  遠田は月子の煙草にも火をつけてやった。月子は気持ちよく深く息を吸った。 「社務所で吸えよ。」 「御主人に臭いと叱られる。」  それで二人の会話は止んだ。
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