神無月の頃

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 喫煙所に面した通りを、大学生の集団が騒がしげに歩いていた。道路ではクラクションがうるさく響いた。二人はただ煙草を吸っていた。遠田は目を閉じた。  音を消す。そして、鈴の音を感じる。  彼がおもむろに目を開くと、交差点には【それら】がいた。顔は見えない、靄と泥を足したような存在。手がないもの、足がないもの、顔がないもの、【それら】はただ立ち尽くしていた。  大学生たちの中にも【それら】がいた。肩に乗るもの、ついていくもの、指差すもの、【それら】はひたひたと足音もなく歩いていた。 「いいの?狩らなくて。」  月子が尋ねてきた。 「アレは雑魚。まだ泳がせておいていい。」  煙草の火を潰した遠田は喫煙所を出た。去り際、月子に向かって振り返り注文だけ伝えた。 「報酬、いい加減現金がいいんだけど。」  月子が小さく会釈したのをみて、遠田はため息をついて通りに消えていった。
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