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それだけなら、まあ良くないけどまだ良い。
「糸巻さん、こっちに来なよー?」
化粧のせいで私は一軍女子に興味を持たれてしまった。
「いや、今予習してるから」
本当は予習なんてする習慣はなかったが、何か上手い断り言葉を探した結果だ。
「えー、なにそれぇ」
一軍女子一同、キャハハと声を上げて笑っている。何が面白いのか理解不能なんだが。
このやり取りが終わったあと、しばらく経って私の友達が登校する。
「マキ、ミホ、おはよ!」
最近の二人は浮かない顔で私に挨拶を返す。
化粧の校則が出来てから、なんだか学校での居心地が悪い。それは教室の雰囲気もそうだし、学校で鏡を見る度に「誰だ。こいつは……」ってビビってしまう。
ただ、薄く顔に色を塗っただけなのに、自分が自分じゃないみたいだ。
すっかり習慣になった帰宅後の洗顔。すっぴん姿の自分を見ると、いつも安心する。
「あっ、おかえり。美姫」
そして、すっぴんになったあとに我が妹は帰ってくる。
我が妹も帰ってきたら洗顔やらクレンジング? やらで化粧を落とす。華やかさが消えただけで美姫は美姫だ。我が妹の化粧は美しいものが更に美しくなるだけのものだと思う。
それに対して、私は自分を別物に変えているみたいな化粧だ。
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