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「美郷、なんか最近浮かない顔をしてるね?」
洗顔の様子をまじまじと見ていたら、美姫が心配そうに声を掛けてきた。
「そうかな……? ーーいや、やっぱりわかる?」
一瞬だけ誤魔化そうと思ったが、折角だし話を聞いてもらうことにした。
「例の校則で学校の雰囲気が変わった話したじゃん? それで、なんか私の人間関係まで変わっちゃいそうでしんどい」
「人間関係?」
「美姫の化粧が上手すぎるせいで、なんか一軍女子から声掛けられるし、それを友達が良く思ってないっぽい」
私は付け加えるように「あっ、美姫を責めてるんじゃないよ!」とフォローをした。
「でも、化粧をしている自分がなんか好きになれなくて……」
私の言葉に美姫はしばらく黙り込む。
「それじゃあ、これから美郷が自分でメイクしてみようよ!」
長い沈黙のあとに出てきた言葉は私にとって意外なものだった。
翌朝、私は自分で化粧をして登校をした。
一軍女子は私の顔を見てぎょっとして「寝坊でもした?」と聞いてきて、思わず私は笑って否定する。今頃、何かしらの陰口を叩かれているだろう。
顔に薄く色を塗るだけ。そう思っていた化粧がこんなに難しいとは思わなかった。
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