第一話『玉響の行き違い』

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「お風呂、入らないんですか」 「えっ」 じっと見つめる緑色の目から圧力を感じる。綺麗な顔をしているからなのだろうか。美人な人は無表情だと怖いと聞いたことがある。頭の片隅で思い出しつつ、「は、入るよ!」と勢いよく答えた。 何か言われるかと思ったが、彼女は「わかりました」とだけ言って自身の食器を皿洗いをしているロロさんの元へと持って行った。二人で何か話しているのが見えたが、彼女はすぐにどこかへ行ってしまった。不思議な雰囲気を持っているけれど、あの様子だと身内ではないんだろうなぁ。 「……まぁ、私には関係ないか」 お風呂入ろう、と自分に言い聞かせて席を立つ。数時間昼寝をしていたからなのか、汗がべっとりと肌に引っ付いている気がしてモゾモゾする。明日の予定なんて何もないけど、すぐに入って寝ちゃおう。 疲れを翌日に持ち込むのは良くない。かちゃかちゃと食器があたる音を後ろにして自分のお風呂の準備をしに向かった。
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