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「それで? 二人で何を話していたのかしら?」
「へ?」
意気揚々と焼きたてのウインナーを口に運ぶ最中だった。唐突に聞かれたので口が開いたままになっている私。「あ、ごめんなさい。食べてからでいいわよ」と促してくれたおかげでなんとか食べることができた。
一口で食べるのは女性的にどうかとよく言われるが、そんなことは気にしなくていいのが楽だ。少しだけ空いている空間にポツンと置いてある野菜ジュースらしきものをチラッと見た。
「まぁ、世間話ですよ。主に私の相談でしたけど」
「そうだったの。この子に相談して何か変わったかしら?」
「変わった、というか。何か大切なものを教えてもらえたような」
「曖昧ねぇ。それ、本当に変わったの?」
チラッとルナちゃんを見るロロさん。黙々と口にご飯とウインナーを交互に運んでいる姿は機械のようで。お腹空いているのとご飯が美味しいの両方だろう。私たちの話を聞いているのか聞いていないのか分からないが、頭を大人しく撫でられている。
「変わりましたよ! 少なくとも私は、そう思っているので」
「そう? それなら良かったわ」
ズズッと最後の一口を飲み干してその後は私のことについて色々質問された。ここに来た経緯を聞かれるかと思ったが、そうではないらしい。どこに住んでいたのかとか、東京はどんな所なのかとか、家族はいるのか、とか。
本当にたわいもないことで、普段友達ともしない話なので新鮮だった。お茶碗に入ったご飯と味噌汁がなくなっていくと同時に私の食欲が満たされていく。最後の一粒まで食べ終わった後、「ごちそうさまでした」と手を合わせた。
「はーい、お粗末さま。今日は予定あるのかしら?」
「うーん、そうですね。お昼から一応、あります」
「そう。お昼ご飯はどうするの?」
「あ、それは外で食べるので大丈夫です」
「了解。気をつけて出かけるのよ。それまで部屋でゆっくりしてたら?」
「そうします」
かちゃかちゃと食器の音を立てながら下げてくれるロロさん。どこまでも気にかけてくれる人で優しさが滲み出ている。少し泣きそうになるのは、誰かを思い出しているからなのだろうか。
ふと頭によぎるのは一人の女の子。いつだって私のことを気にかけてくれた、優しい女の子。少しだけ浮いている足をぶらぶらさせながら、ぼーっと天井を見つめた。
「元気に、しているかなぁ」
「誰がですか?」
「うぇ!? い、いつの間に……」
私の独り言にツッコミが入るのは今日で二度目。先ほど視界に入っていた彼女は片付けの手伝いをしていたはず。なんなら食器洗いを手伝っていたのにいつからここにいたのか。視線を下ろすと手には一枚の布。食器が全てなくなった机を拭きに来たようだ。
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