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第二話『ゆめうらら』
真っ暗な闇から光差し込む光景に変わる頃。一人の男性が神社に向かって歩いていた。一人の男性、ではあるが少し変わった風貌をしている。身につけている服が古めかしいとかではなく、人の頭ではない異形頭の彼。
今では当たり前のように異形頭が生活しているが、一時期はそこそこに話題になっていた。偏見はあれど、彼らは基本的に『人間よりも人間らしい』と言われているため、邪険に扱われることもなく過ごして来た。
「ふぅ。まだ少し暑いわねぇ」
石段の途中で腰を下ろす一人の異形頭、ロロが一歩また一歩とそこそこ急勾配な階段を上っていく姿が。いくつかの木陰があることのよって暑さは幾分かは和らいでいるが、それでもじんわりと感じる暑さは異形頭の彼であったも大変なようだ。
大正ロマンのような服装をしている人間にとっては坂を上ることよりもそちらの方が苦労するだろう。
「さて、もう一息ね」
誰に言われているのか、それとも自分に言い聞かせているのか、ゆっくりと腰を持ち上げた。いつも一緒にいるルナは今だけ留守番をしている。正確に言えば他のことを任せているのでこちらには来れないのだ。
しかし、ロロはそれでいいと思っている。これは彼とあの人だけが知っている秘密でいいのだから。
苔むした階段はあと少しで目的地にたどり着きそうだ。小さいとは言え山の中にある神社は遠く感じる。海の近くにある神社と言うことで一時期某SNSにたくさん投稿があったのだが、すぐにそのブームを過ぎ去っている。今ではロロと他数名の地元の人しか訪れない神社になった。
だからと言って何かが変わるわけでもなく、むしろ人が少なくなったことにより離れていた地元民が戻って来た。変に飾らず、そのままの姿で受け入れてくれるのだから神様も気が楽になるはず。
「よいっ……しょっと! はぁ、やっと着いたわぁ」
最後の一団を上りきったところで、また一息ついた。ふと見上げると、相変わらず堂々と建っている社が一つ。もの凄い大きいと言うわけでもなく、小さいわけでもなく、どこにでもありそうな大きさ。
近所の人たちが管理していることになっているとか。綺麗に掃除されて、少しずつ落ちている葉は端っこにまとめられているのが目に入る。誰にでも愛されるのではなく、地元の人から愛されているのが分かるのだ。
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