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そして、私はというと――
「あ、紅葉綺麗!」
スマホを構え、色づいた山をロープウェイの窓から写真に収める。
人々がVR旅行に熱中してくれているおかげで、観光地は人気がなく、ホテルの予約も気軽に取れる。
人の入りが少ないため、ホテルの料金は値下げされ、実はVR機材のレンタル料と大差がなくなっている。
元から旅行が好きな私は、予約を取ったり旅行の計画を立てるのも好きだ。
煩わしいと思わない。
旅行先でお土産を買ったり、名物を食べるのも楽しいし、写真だって撮りたい。
汗だくになって歩いたり、旅先でモノづくりをしたり、道に迷って現地の人に話しかけたり――
こういうことは、VR旅行では経験できない。
VR旅行は便利だけど、現実の旅行みたいに不便に思える部分は、お金で買えない経験なのだ。
だから私は、これから先もどれだけ世の中が便利になって、VRが進化しても、この足で旅行をする。
Fin
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