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「ひな!」
校門付近で呆然と立ち尽くしている葵のもとへ、奏太が駆けてくる。
「バカ。お前、なにやってんだよ!」
「だって……」
「だってじゃないわ。お前、あの人が誰だかわかってんのか?」
「誰って市ヶ谷椿だろ」
「やっぱ知らないのかよ……いいか? あの人はTONY電機の息子だ」
「トニーの息子……えっ、あいつハーフだったのか!?」
葵の天然っぷりに、奏太がげんなりとした顔をする。
「TONY電機はわかるだろ。大手電機メーカー。そこの社長が市ヶ谷先輩のお父さん。つまり、あの人は社長令息」
社長の息子。しかも大手電機メーカーの息子ともなれば、その肩書きの偉大さはいくらおバカな葵にもわかるというものだ。
だがしかし。
「それがなんだよ。俺はサンフラワー日向の息子だぞ。花屋の跡取り息子だっつーの」
「張り合うな。規模が違いすぎる」
奏太はそう言うが、葵にしてみれば社長の息子だろうが、はたまた大病院の跡取り息子だろうが、そんなもの、なんの意味もなさない。
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