Two Flower

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 こんな憂鬱な日は、購買で売っているイチゴミルクを飲むに限る。葵は高校一年生になっても、まだ背が伸びることを諦めていない。なんといっても、あと1センチで170に届くのだ。牛乳に含まれるカルシウムがどれほどの威力を発揮してくれるか知らないが、あと1センチくらいならなんとかなるだろうと思っている。  またイチゴミルクかよと笑う奏太を無視して教室を出る。階段をあがって踊り場を過ぎて、右に曲がれば購買だ。しかし、あと一段で踊り場というところで葵は足止めをくらった。  またしてもデートチャレンジである。まるで昨日のデジャヴだ。女の子の台詞も椿の返答も、昨日と全く大差がない。そして、チャレンジに失敗し葵の横を通りすぎていく女の子の、軽やかな足取りすら同じだった。 「……なんだ。またお前か」  最後の一段に足をかけたまま停止している葵に、椿が呆れたような眼差しを向けてくる。中途半端に乗せた足裏にぐっと力をこめ、最後の一段をのぼりきると葵は椿に向かって言った。
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