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「もうやめろよ」
「は?」
「昨日も言ったけど、デートチャレンジだって知ってんだろ? そんなのにいちいち付き合う必要ない」
「付き合いたくなくても向こうからやってくる。蟻だからな」
「お前は砂糖じゃないだろ」
椿は砂糖ではない。そして、女の子たちは蟻ではない。比喩だとわかっていても、葵はそれを否定したかった。なにより無遠慮に椿を傷付ける彼女たちが許せない。椿は砂糖でもなければ、アトラクションでもないのだ。れっきとした血の通った人間で、物のように扱われて傷付かないはずがない。
「……傷付くだろ、お前が」
葵の言葉に椿が器用に片眉をあげてみせる。
「いや、少しも」
「なんでだよ!」
これもまた、昨日のデジャヴのようだった。怒っているかと聞いた葵に、椿は今と同じ返事を返した。いや、少しも。
「何度も言わせるな。俺に群がってくるやつは蟻だ。そんなもの払い落として踏み潰せばいいだけで、それのどこに、俺が傷付くと?」
まるで言葉の通じない、心の通い合わない状況に、ついつい葵はカッとなる。
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