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One Flower
女というものはつくづくよくわからないと、日向葵は思う。今だって、どうして告白するのに友達を引き連れてやってくるのか。全く意味がわからない。ちなみに告白されているのは葵ではなく、市ヶ谷椿という上級生である。
「市ヶ谷先輩、良かったら今度デートしてください」
女生徒の声が屋上の風に吹かれ、葵の耳まで届いてくる。昼休みに屋上で昼寝を決め込んだことを葵は今さらながらに後悔し、あくびを噛み殺しながら身体を起こした。
葵の位置からは女生徒三名の姿しか見えない。告白されている市ヶ谷先輩とは、さぞやイケメンなのだろう。なぜって告白している女生徒は葵と同学年の女子で、一年生の中ではトップクラスにかわいい子だからだ。
しかし、次に葵の耳に届いた言葉は辛辣で、どこまでも冷たかった。
「デート? なんのために?」
からかいを含んだ声音ならまだマシだ。けれど、男の声にはほんの少しのからかいもユーモアもなく、ただひたすらに冷徹だった。
嫌なやつ。瞬時にそう思う。断るにしても、もっと言い方があるだろうに。
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