Two Flower

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「いろいろって?」 「ん~……女の子はよくわかんねぇなあとか」 「あらあら。ついに好きな子でもできたの?」  葵から皿を受け取り、カレーをたっぷりかけながら紫陽子が弾んだ声で笑う。 「そういうんじゃなくて、なんかさ? 三年の超イケメンの先輩にデートチャレンジとかいって、そいつのこと本気で好きでもないくせにデート申し込んだりして」 「へえ。最近の子は積極的なのね」 「積極的とか、そういう問題じゃないよ。だって本気じゃないんだから」  カレー皿を持ちテーブルに着席すると、葵は「いただきます」と両手を合わせてからスプーンを手に取った。野菜たっぷりのポークカレー。紫陽子がカレーを作る時は、残りものの野菜を片付けたい時だと葵は知っている。花屋はそんなに儲からない。だから日向家は決して裕福ではないが、葵は紫陽子と囲む食卓が大好きだった。  普通は高校生にもなれば、母親にあれこれ話したりしないのだろう。けれど、ふたりきりだ。葵には紫陽子しかいないし、紫陽子には葵しかいない。たったひとりの家族にすら話せないことを、一体ほかの誰に話せるというのか。幼い頃から、どんなに忙しくても葵のおしゃべりに付き合ってくれた紫陽子だからこそ、葵は高校生になっても口を閉ざすことをしない。
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