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Three Flower
そわそわと足裏が落ち着かない。サッカーシューズの中、どうしてか足裏がむずむずして、五本の指はもぞもぞとしてしまう。こんなことは初めてだった。サッカーボールを追うよりも、誰かを待ちわびて足が落ち着かないなんて、葵の人生において一度もない。
「おいおい、日向。せめてコートのほうを向いてくれよ」
二年の先輩が、身体ごと後ろを向いてしまっている葵に苦笑する。すみませんと謝り、コートのほうに身体を向けるも、首はすぐに後ろを向いてしまい、とうとうキャプテンの高藤に頭を叩かれてしまった。
「集中しろ!」
「はい……先輩、俺トイレに行ってきてもいいですか?」
集中しろと言ったそばから小学生みたいなことを言い出す葵に、高藤は呆れ返って言葉もない。だからといって生理現象であるソレをダメだと言うこともできず、高藤は力なく「あぁ」とつぶやいた。
グラウンドを出て急いで校舎へと向かう。なにも本当にトイレに行きたいわけではない。椿に会いたいだけだった。自分でも、どうしてこんな気持ちになるのかわからない。わからないけれど会いたいし、会いたいのに会えないのがもどかしくて、葵はキョロキョロしながら椿のいそうなところを探してまわった。
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