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「いいじゃないですか、デートくらい」
ほかの女生徒からの援護射撃。しかし、それも軽く撃ち落とされてしまう。
「デートくらい? とてつもなく無駄な時間だ」
その言葉に今度こそ葵は立ちあがる。どれだけイケメンか知らないけれど、そんな言い方はないだろう。固いアスファルトを蹴り、今まさに屋上を出て行こうとする男の背中を追う。
「おい! 待てよ!」
振り向いた男の顔は冷ややかだった。身長は葵より頭ひとつ分高く、ゆうに180は越えているだろう。モデルのように長い手足。切れ長の涼しげな瞳は煙る氷のように冷たい。すっと高い鼻に、形のいいくちびる。一分の隙もないほどの美青年がそこにいた。
「なんだ?」
「お前、断るにしても言い方ってもんがあるだろ! なんだよ、ちょっとかっこいいからって偉そうに!」
今にも掴みかからん勢いで捲し立てる葵に、男はわざとらしいまでに大きなため息をつき首を横に振った。
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