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「時間の無駄だからそう言ってる。変に期待をもたせるより、はっきり断ったほうが親切だ」
「だからっ、そうじゃなくて!」
ぐわっと感情があふれかえり言葉が出てこない。苛立ったように髪を掻き毟る葵に、男は黙って背を向けた。
「あ、おい! 話はまだ、」
「いいのいいの」
屋上から男が去り、告白をしていた女生徒が笑いながら葵に言う。
「よくないだろ!」
「いいんだって。あーあ。デートチャレンジ失敗かあ」
少しも落ち込む素振りもなく、まるでゲームに失敗したかのような軽々しさで彼女が口を尖らせる。
「デート……チャレンジ?」
「そう。市ヶ谷先輩て、あんなにイケメンなのに彼女いないし。誰が告白しても断るから、デートくらいならいけるんじゃないかってことで、みんなチャレンジしてるんだ」
デートチャレンジ。つまり、先ほどのアレは告白などではなく、デートを申し込んだら成功するかどうかという──。
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