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「誰が最初に成功するかって、投票みたいなのまでやってるよ」
そこまで騒ぎになっているのなら、当の本人が知らないはずもない。椿はぜんぶわかった上でわざわざチャレンジに付き合ってやっていたのだ。
「なんだよ、それ。そんなのあいつが可哀想じゃん!」
むすっと頬をふくらませて憤慨する友人に、奏太はやれやれと肩をすくめた。良くも悪くも葵は直情型で、良く言えばまっすぐ、悪く言えば猪突猛進が過ぎる。自分が間違っていないと思えば相手が誰であれ勇敢に向かっていく葵のことを、奏太は好ましく思っているが、いかんせんトラブルも多い。きっと椿のこともよく知ってはいないのだろうと、奏太が口を開きかけた時──。
「あっ!」
タイミングがいいのか悪いのか、校門へと向かっている椿を葵が発見してしまった。奏太の制止も聞かずグラウンドから飛び出していく葵。
「おい! 市ヶ谷椿! 待てよ!」
いきなりグラウンド脇から飛び出してきた小さな物体に、椿は足を止め怪訝そうに眉を吊りあげる。
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