沈 む 贖 い

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 見上げた空は、今にも雨粒を落としそうに鈍垂(どんより)と曇っていた。隣で同じように空を仰いだ赤嶺 光輝(あかみね みつき)も同じことを思ったか、   「──寄り道は辞めとこうよ……」  と小さく呟いた。頷いた俺に笑顔を見せると、ショルダーバッグを担いで先を歩き出した。  週の中日、水曜日の夜だった。  賑やかな街は熱気を孕み、我らが謳歌する夜だとばかりに、通りで(たむろ)する若者たちは無意味に喚き発て、歓声は虚しさの尾を引いて歓喜の闇へ飲まれて行った。   ──何がそんなに楽しいんだ……  僅かに荒裂(ささく)れだった気持を暈し、前を歩く光輝の背中をぼんやり眺めた。
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