12人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
見上げた空は、今にも雨粒を落としそうに鈍垂と曇っていた。隣で同じように空を仰いだ赤嶺 光輝も同じことを思ったか、
「──寄り道は辞めとこうよ……」
と小さく呟いた。頷いた俺に笑顔を見せると、ショルダーバッグを担いで先を歩き出した。
週の中日、水曜日の夜だった。
賑やかな街は熱気を孕み、我らが謳歌する夜だとばかりに、通りで屯する若者たちは無意味に喚き発て、歓声は虚しさの尾を引いて歓喜の闇へ飲まれて行った。
──何がそんなに楽しいんだ……
僅かに荒裂れだった気持を暈し、前を歩く光輝の背中をぼんやり眺めた。
最初のコメントを投稿しよう!