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「『厄介払い』?」  意味が分からずオウム返しするリリスに、アッシュは同情したように溜め息をついた。 「ま、オレも御同様のようだからしょうがねぇけど」 「あなたが、私と何が同じというの?」  するとアッシュは、まだ分からないのかと言うように舌打ちをする。 「お嬢さんは、伯爵家から借金のカタとして男爵に送り付けれたのさ。お嬢さんは嫁じゃねぇ、ただの手形だ。男爵にとって用があるのは伯爵位の『箔』だけだから、あとはもうあんたに用がないのさ」  それは何となく感じ取っていたが、改めて他人に指摘されると耳が痛い。  それ以上に、心が痛い。  だが―― 「それなら私は、すぐに実家へ帰るだけです。こんな無礼な真似をされてまでここに居る理由など無いわ。あなたも到着したばかりの所大変でしょうが、直ぐに馬車を手配してください」 「あんた、ぜんっぜん、分ってないのな」  アッシュは強い声で言うと、盛大な溜め息をついた。 「伯爵家では、もうお嬢さんを迎え入れるつもりは無いんだよ。だって側室のバートリーさんが先週立派な男児を産んだんだからな。跡取りが出来たのなら、お嬢さんは無駄飯ぐらいのただの厄介者だ。黙って男爵家で養ってもらえと、送り返されるのが関の山さ」  その衝撃の内容に、リリスの顔色はますます悪くなる。  お父様の側室が男児を産んだ!?  それじゃあ、お母様は? 「わ――私のお母様は、でも……」 「マリア様はリリスお嬢さんを難産の末に産んだ時に身体を壊してしまって、もう子供を身籠る事は出来ないって話じゃん。そうなると、今回側室が産んだ男児で跡取り決定だ。本家の爵位は男児にしか継げないからな」
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