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何故だか、不安になるのを止められない。
招かれたお茶会へ足を運ぶたびに、リリスが目にするのは、自分とは真反対のプロポーションをした女性たちだ。
細い枝のような腕に、今にも折れそうな腰に、幽鬼のように青白い顔。
『あんなに貧相な体つきなど、貧しさの証明ではないですか』
何故彼女たちは、あんな病人のような姿をしているのだと、気になって侍女へ訊ねるたびに決まって侍女はそう答えを返してくるが。
――その言葉を疑った事など無いが。
(でも、なんだかモヤモヤしてしまうわ。あんな無礼な方の言葉に踊らされるなんて、どうかしていると思うけれど)
リリスは溜め息をつくと、
「少し早いけれど、皆でお茶の時間にしましょうか」
と、沈んだ気分を変えるようにアンリへ微笑んだ。
◇
午後になって、早馬がクラシス伯爵家へ到着した。
そして直ぐに、リリスの父母を乗せた馬車も屋敷へと帰還した。
慌てた使用人たちが出迎えに駆け付けたのだが、彼等は主人の顔を見てサッと表情を強張らせた。
いつもは温厚な雰囲気で鷹揚に構えている筈のバルア・クラシス伯爵が、人が変わったように厳しい顔になっている。
奥方のマリアに至っては、目を真っ赤にして青ざめ震えているではないか。
伯爵と夫人は一言も発する事なく、先に到着していた使節が待つ応接室へと姿を消した。
尋常でないその様子に、使用人たちは何事かあったのではないかと声を潜め、噂話に興じた。
◇
「ここのところ急に、お茶会の誘いが無くなったけれど……どうしたのかしら?」
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