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今までは対処しきれない程に招待状が届いていたのに、それが徐々に減り続け、今日はとうとう0になった。
さすがに気になり、リリスは侍女へ問い掛ける。
「もしかして、なにか病でも流行っているのかしら……毎日のように皆さんからお誘いのお便りを頂いていたのに、全然来ていないのでしょう?」
「はぁ……そうですねぇ」
何故だか精彩の欠くアンリの返答に、リリスは眉を寄せる。
利発で賢いアンリにしては、あまりに気のない対応ではないか。
気になって、リリスは改めて向き直る。
「ねぇ、アンリ。あなたは何か心当たりがあるのでしょう? でしたら、正直に私に教えて」
とんでもない流行り病が流行していて、それで皆が外出を控えているのなら、各方面へお見舞いの便りを出すのが貴族令嬢としての礼儀だろう。
そう思い、続けて口を開こうとしたリリスであるが、そのセリフは中断された。
ドアがコンコンとノックされ、「リリス、ちょっといいかい?」と、父親の声が聞こえたからだ。
無論、リリスに拒否する理由は無い。
「どうぞ、お父様」
朗らかに返事をし、リリスは出迎える為に椅子から立ち上がった。
◇
「え? どういうことですの?」
リリスの部屋を訪れた父親は、挨拶もそこそこに、マーロー男爵という40を超えた貴族の姿画を差し出しながらとんでもない事を言いだした。
「どうもこうもない。この方が、リリスの旦那様となるのだよ」
その中年貴族の姿画は、お世辞にも美男子とは言い難い。
おまけに、リリスとは一回り以上年が離れていて、うら若き乙女であるリリスの花婿には幾ら何でも相応しいとは言えなかった。
「嫌ですわお父様。冗談にしては、ちょっとセンスが悪いわ」
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