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そうだ、今までのジンの行動の全部が、無償でないという事は薄々感じていた。
ジンには何か他に目的があって、リリスの為に暗躍したのだろうと。
青白い月のように綺麗なジンの顔を見つめながら、意を決してリリスは問う。
「あなたの本心を、教えてちょうだい」
「本心だって? 藪から棒に何を言い出すかと思ったら……」
「いつもあなたは、私が有利になるよう行動してくれた。右も左も分からなかったこの王都で、腕のいいパタンナーと私を引き合わせてくれたのもあなただった。そのお陰で、斬新過ぎるとどこのデザイン事務所でも門前払いを喰らった私のデザインが、見事に昇華される事になったわ」
そうして、これぞ時代の新風であると貴族たちを焚き付け、第一王女の目に留まるよう様々な策を弄して。
リリス・パメラと偽名を名乗り、身分を隠しながら王都に数店舗を展開し、着実にファンと勢力を増して行った。
アッシュはしきりに「全部お嬢さんにそれだけの実力があったからです」と言ってくれたが、やはりジンの力が大きかったのは間違いないだろう。
リリスのパトロンになりたがる有力貴族の貴婦人や商家の令嬢たちが、ジンに魅せられていたのは明らかだったし。
「この六年、あなたは私の為に奔走してくれた」
「そうだよ、その通りだ。僕は約束通り、君の復讐も手伝った」
「あなたは、私の恩人よ……感謝するわ、ジン」
「ありがとう」
とろけるように魅惑的な笑みを浮かべながら、ジンは軽く会釈をした。
リリス・クラシス伯爵という称号を正式に与えられ、復讐も達成し、これでリリスの願いは全てが叶った。
――――叶った、はずだ。
「確認するが……君が僕に願った事は、全て達成した筈だよね?」
「……そうね」
憂鬱そうに顔をしかめながら、リリスはとりあえず同意した。
そのいかにも不本意そうな態度に、ジンは眉を顰める。
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