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「それでは、最終確認をしよう」
「『最終確認』?」
「リリスの望みは、全て叶った。それは認めるんだね?」
クラシス家の爵位はリリスに譲渡されたから、リリスの父母は破産が決定した。
マーロー男爵は王家を謀った咎により、爵位没収の上領地と財産も失い、後継者も失った。
リリスが最も信頼を寄せていた侍女のアンリは、悲惨な末路を迎えた。
ジンを召喚して願った呪いは、これで全て叶ったと言っていいが――。
「……あなたに一つ、訊いておきたい事があるんだけど」
「何だい?」
「人の死を願うなら、生贄の命を差し出せと一番最初に言ったわよね。もしもあの時点で私が生贄を用意していたら、あなたは全員を殺せたの?」
「――それは」
「出来なかったのよね? そして私にもそれが無理だと分かっていたから、あなたは最初にハッタリを言って自分が特別な存在であると印象付けたんだわ」
それは、アッシュが散々言っていたことだった。
どうかお嬢さん、目を覚ましてくださいと。
「でもあなたは、特別な力を持っていたのは本当だった。魔力で人を殺す事は出来ないけれど、相手を魅了して意のままに操る事は得意だった。だから私を利用して、この国で栄耀栄華を極める事が可能な地位にまで上り詰めた――全て、『自分の為』にね」
「……何を言いたいのか分からないが」
「私も、何度も『それ』は考え過ぎだと思って否定して来たわ。そして、次にこう考えたの。ジンが私の手助けをしてくれるのは、私の事が好きになったからじゃないのかしらって」
悪いヤツに城へ閉じ込められた可哀想なお姫様を救う為に、突如現れた素敵な王子様。
誰だって、女の子ならそんな夢を見る。
恋をして、愛し合って、暗黒に閉ざされたような世界から、お姫様と王子様は協力して二人で飛び出すのだ。
――そんなロマンス小説のような夢も、一瞬見たが。
「本当、バカみたいよね」
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