128人が本棚に入れています
本棚に追加
フッと小さく笑うと、リリスは再びジンを見つめた。
そうして、『真実』を告げる。
「あなたは誰も愛していないし、これからも誰一人愛する事は無い。ユリはあなたの事が好きなようだけど、それを聞いてもあなたは何も感じないでしょう?」
「……それはずいぶんと断定的だな。どうしてそんな事を言うんだ」
「だって、本当の事でしょう?」
淡々と告げられ、ジンは二の句が継げぬように押し黙った。
計画では、「私を愛していたから、あなたは私を助けてくれていたんでしょう? 私もあなたの事をずっと愛していたわ」と、目を潤ませながら感謝と思慕をジンへ寄せてくれる筈だったのだが。
ここに来て、全ての目算が狂っている。
決定的なのは、リリスはジンに全く愛情という感情を抱いていない事だった。
リリスからは、ユリやその他の令嬢たちのような、津波のように押し寄せて来る好意を全く感じ取れない。
これは予想外だ。
六年もの間、陰に徹してこれだけ尽くしてくれたのなら、当然、勘違いして自惚れるのが普通なのに。
「あなたは私のことも全然好きじゃないでしょう?」
「そ……そんな風に思っていたのか、リリス? 僕は残念だよ」
リリスの言葉にショックを受けたように俯くジンであるが、彼女には通じない。
「下手な演技はやめて」
「……」
「私は真実しか言ってないはずよ。あなたが愛しているのは、常に自分だけ」
そこで一度言葉を切ると、リリスはフゥと息を吐いた。
「――じゃ、ないわね」
「何だと?」
「あなたは自分自身も全く愛してないわ」
その指摘には、さすがのジンも驚いた。
それは、自分でも全く自覚していなかった『真実』だったからだ。
最初のコメントを投稿しよう!