最終章

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 そのセリフは、衝撃的だった。  ジンの顔色が目に見えて変わる。 「君は……自分自身の生も、ここで終わって良いと本気で――」 「ええ、そうよ。何の未練もないわ」  本当に一切の迷いもなく、リリスはそう答えた。  そうして、静かに目を瞑る。  今まさに、自分の身体を乗っ取ろうとしている相手を前にして、これは余りにも無防備だ。  だがリリスは、これ以上の栄華を極め得る可能性を前にしても、。 「――あなたには、感謝しかないわ。私の復讐を叶えるために努力してくれたのは事実だもの」 「……だから、代償として自分自身の肉体を差し出す事に抵抗は無いと?」  震える声で問うジンに、リリスは応える。 「その通りよ。この先の『リリス』の生き方は、あなたの自由にしたらいいわ」 「本気かよ……」  呆気に取られたような声にプッと吹き出しながら、リリスは何かを思い出したように口を開いた。 「あなたに、頼みがあるの」 「――頼み?」  威勢のいい事を言っていたが、やはり怖気づいて来たかと若干調子を取り戻しながら、ジンは冷笑を浮かべる。 「ハハハ、いいだろう、言ってごらん」 「アッシュとユリには、お願いだから酷い事はしないでほしいの。彼等には一生困らない分のお金を渡して、故郷に帰るよう暇を出してあげて。それが、唯一の頼みよ」 「――――アッシュと、ユリ? 唯一の頼みがそれか……」  これはとんだ誤算だ。この期に及んで、まだ他人の身の上を心配するとは。 このお姫様は、本当に自分自身には未練がないらしい。  それこそ、ジン唯一の楽しみだった阿鼻叫喚は、ここに来て全く発生しないようだ。  飽きる程の生を貪って来たが、こんなこと(現象)は初めてだ!
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